【暗殺教室】放課後、月のカフェで (ページ41)

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何やってんの、と言いたげな視線を受けて苦笑いを浮かべておいた。かるまくんが急に来るからだよ。いや、事前に来店を知らせるっていうのもおかしな話だけども…。
拭き終えたコップを並べて、何事もなかったかのように注文を取りに向かう。…あ、Aスペシャルって言われるかな。心の準備を少しだけしておこう、うん。

「ご注文はー？」
「この前の話、覚えてる？」

…やっぱり。心の準備しておいて正解だったね。

「もちろん。Aスペシャルだね」

後から思えばちょっと恥ずかしいというか、もう少し何かなかったのかと言いたくなるような商品名。他のお客さんに聞こえてしまわないようこっそり確認を取る。

「うん。あとチーズケーキも」
「はーい。すぐ淹れます。ちょっと待っててね」

次に注文が入るのはいつか…かるまくん次第だからそもそも注文が入るかどうかもわからなかったこのメニューだけど、私なりに色々考えてみた。甘みを足すのは、お砂糖よりも蜂蜜の方が香りやコクが出るのかなとか。じゃあ、どの蜂蜜とどんな豆が相性がいいのかなとか、どれくらいが適量なのかなとか…。インターネットや本でちょっと調べてみたり、閉店の後ほんのちょっとだけ試作をしてみたり。私はちょっと舐める程度の味見で精いっぱいだし自分の舌に自信もないけども…。ちょっとくらい、良くなってるといいな。少なくとも改悪はしてない…はず！
レシピの通りに淹れて。チーズケーキとAスペシャル(改)をサービストレイにのせて運ぶ。

「お待たせしましたー」

コーヒーが飲めない人と飲める人じゃやっぱり違うよね。じゃあかるまくんはちゃんとした試飲第一号だ…。不味いって言われたらショックだなとか、前のがベストだったらどうしようとか、色々心配になってきて、ちょっと変わったんだよ、というのを伝え忘れたことに少し遅れて気が付いた。

「…前のと違うね」

気づかれた…！いや、気づいてもらえなかったらそれはそれでショックというかあれなんだけど。怒られたらどうしよ。なんか声が柔らかいから大丈夫…だといいな。

「うん。前の味、覚えてた？私なりに色々考えてちょっと変えてみたんだけど、変になってない…？飲めそう？」
「前のも美味しかったけど、俺はこっちのが好き」
「ほんと！？じゃあ改良成功だ。何か、これはちょっと違うなってとこある？」

かるまくんが笑ってくれたなら、彼のためにあれこれ悩んでコーヒーを何度も口にした甲斐があるというもの。