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恐怖と、そこから解放された安心感からか、足が震えて生まれたての小鹿状態の私を見てかるまくんが爆笑したり。どうにか歩けるようになってから劇場を出たら、もうすっかりお昼。
「…ふう。お昼ごはん、食べにいこっか。かるまくんは何食べたい？ちなみに私はポップコーンとジュースでお腹が膨れちゃってるのでなんでもいいです」
「Aちゃんがなんか奢ってくれんの？」
「いや、別に奢れなくはないけども…」
映画館までが約束だったよね？かるまくんはホストかなにかなの？…と、聞く前に冗談だと笑った。冗談がわかりづらい…。
「っていうか、アレでお腹膨れたとか本気で言ってる…？」
「本気で言ってる！」
そんな珍獣を見るような目をしなくても。あれだよ？JKっていう生き物の胃袋は、かるまくんが思ってるよりずっと小さいんだよ。知らんけど。
じゃあハンバーガーにしよ、と映画館のすぐそばにあるショッピングモールのフードコートにやってきた。ポテトしか頼まなかった私が言うのもなんだけど、食べ盛りの男子中学生の昼食がそれだけで足りるんだね。かるまくんはいっぱい食べるタイプに見えるわけでもないけども。
「なんか、Aちゃんと向かい合って食事するの気持ち悪い」
「えぇっ…？ごめんね！？」
気持ち悪いってなに。きもちわるいって…。映画が怖すぎて泣いて、なんか異常に涙腺が緩んでるんだからこれ以上いじめないでください…？
「間違えた。なんか変な感じする」
「なんか変な感じときもちわるいはだいぶ違うと思うよ？」
一緒に何か食べることってないじゃん、俺が座るのいつもカウンターだし、と私のツッコミはガン無視で続ける。
「うん。確かにそうかも？でも、私は好きだよ。かるまくんが美味しそうに食べてるところを見るの」
あれ？なんか変なこと言っちゃってない…？
いやいや、全然変じゃない。だってお客さんが、出したものを美味しそうに食べたり飲んだりしてくれてたら、店員としてはすごく嬉しいもん。美味しそうにケーキを食べてるかるまくんについ目を向けちゃうのも…ドアをくぐる赤髪が見えると嬉しくなるのも…全部。店員として嬉しいとか、そういう、ことだよね…？
「……こっち見ないで、黙って食べてくれる？」
「は、話振ってきたのはかるまくんじゃなかったでしたっけ！正面にいるのに見るなっていうのはちょっと無茶だと思うし…！」
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作者名：nano* | 作成日時：2021年8月18日 11時
