【2j3j】また此処で【短編集】 (ページ2)

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雷 knmc ページ2

/knmc(友達)side

まずい。大変まずいことになったぞ

今日は来週に控えた定期考査の為、授業が短くなったのを利用し友達が家に勉強を教わりに来ている
時間も時間でそろそろ帰ろうか、なんてところで、運が悪く突然の豪雨に見舞われた

『雨すごいね？この調子じゃ雷も鳴りそうだ』

「っ、そうですね、時間はありますし、僕の両親が戻ってくるまで家にいたらどうです？」

『いや、むしろこれ以上酷くならないうちに帰ろうかな』

外は今にも雷が鳴り出しそうな真っ黒な雲に覆われている
本人が『帰る』と言うなら、確かにそこまで遠い距離でもないから帰してやってもいいのだが
僕の両親が居ない今、Aが帰ると家には僕1人になってしまう
実を言うと雷が得意じゃない身で、雷雨の中停電でもしてみろ。大惨事だ

「危ないですよ。どうせお前のことだ、雨に浮かれて寄り道すんだろ」

『あ、バレた？』
『けど大丈夫、今日は剣持くんありがとうな。また明日学校で！』

Aは生粋の悪天候好きだ、台風のときに限って外に出たがる子供と一緒
しかしこのままだと僕は1人だ。そして十中八九雷が鳴る

どうにかして引き留めようと、早々に部屋の戸を開けようとするAの背中を追いかけ立ち上がる
しかし外が一瞬光ったと思えば、直ぐに大きな雷鳴が轟いた

「うわ？！」

『え、剣持くん？！ちょっと大丈夫か？』

みっともなく叫び声を上げ、そのままバランスを崩し床に倒れ込む
Aは直ぐに駆け寄って来てくれたが、再び雷鳴が響いてきた

『もしかして剣持くん、雷苦手...？』

「だったら、っ、悪いですか...」

ああ恥ずかしい。涙さえ出ないものの、声も体も容易く気付かれるくらいには震えていた
Aは僕を優等生と言って、なんでも出来るすごい奴と思っている節がある
幻滅しただろうか。高校生にもなって雷にビビり、みっともなく耳を塞ぎ震える奴を見て

嫌だ、それでも帰らないでほしい

『大丈夫だよ、30分後には落ち着くらしいから、それまでは一緒にいよう』

気付けば僕は、Aに優しく抱きしめられていた
大丈夫、大丈夫と何度も言いながら、雷の音が気にならないように、耳元でずっと喋り続けてくれる

次に目を覚ましたときにはAはいないで、置き手紙と先までが夢かと思うほど晴れ渡った空があった

＂今日は勉強教えてくれてありがとう、剣持くんのお母さんが帰ってきたから俺は帰るね。また明日学校で。
今日のことは、俺たちの秘密です。＂