ep.90 ページ43
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みんな、倒れたＳＡＲＵを心配して集まっているはずなのに、ＳＡＲＵはどこか怯えた表情を浮かべていた。
「もう終わりだ……！」
「まだだ」
そう返したのは、ギリスだった。
「ＳＡＲＵ、まだ終わってない」
「そうよ。がんばってよ、ＳＡＲＵ」
ギリスに続き、メイアもＳＡＲＵに呼びかけた。
「僕にはもう、お前たちに誇れる力は、残っていない……」
「試合時間はまだ残ってる。最後まで一緒にやろう！」
「なぜ？」
ＳＡＲＵは本当に意味がわかっていないようだった。戸惑いながら、チームメイトの顔を見やる。
「なぜって、当然だろ？」
「ここまで一緒にやってきたんじゃないか！」
「さあ、いつもみたいに指示してよ」
彼らがＳＡＲＵに手を差し伸べるのは、ひとえにＳＡＲＵが今までフェーダを守ってきたからだということすら、ＳＡＲＵは知らないのだ。
「このまま負けるのは、僕の美学に反するんだ。それにＳＡＲＵだって、負けるの嫌いだったよな？」
ギリスの言葉を聞いたＳＡＲＵは、彼の手を取った。右脚を少し、引きずっている。
「負けるものか……僕を誰だと思ってる！」
それでも、ＳＡＲＵは立ち上がった。そうだ、リーダーは――キャプテンが折れてはいけない。仲間を奮い立たせ、連携の要を担い、チームを勝利へ導くのが、キャプテンだ。
「僕も最後まで戦う。お前たちと一緒にな！」
フェーダの選手たちは、ＳＡＲＵを笑顔で迎えた。
「さあ、行くぞ！」
「おおっ！」
このとき、私はやっと、本当のサッカーの試合になったと思った。
フェーダが宣戦布告する前――私がルートエージェントになる前、地域のサッカーチームにいたとき、挑んだ試合と同じ。世界の運命よりも、スタメン争いのほうがよっぽど大事だったあの頃の試合と同じ。
「よーーし！ 思いっきりサッカーしよう！」
松風の声を皮切りに、試合が再開される。両者一歩も譲らない、互角の戦いが繰り広げられる。
ＳＡＲＵと松風が、こぼれたボールを拾おうと走る。二人とも体力は底を尽き、足取りはふらふらだった。それでも、諦めずにボールを追いかける。
「あっ！」
二人が盛大にぶつかり、その場に倒れた。そのあいだもボールは転がり続け、ついにタッチラインを越えた。その瞬間に、長い長いホイッスルが響いた。
「ここで試合終了ーーーーー！！！ 最終戦はクロノストームの勝利で幕を下ろしたーーーーーーー！！！」
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明日が最後の更新です。
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はるま(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます。とても励みになります！ bizyuさんもあたたかくしてお過ごしください( ¨̮ ) (12月19日 0時) (
レス) id: 99f9ea638a (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて時間も忘れるほどに何度も読み返しています！これからもお身体には気をつけて頑張って下さい！ (12月18日 21時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2023年11月30日 22時
