ep.70 答え ページ23
「あれは一体、なんだったのか……」
不思議そうに呟くアルファに、松風が驚いた様子で言った。
「それってひょっとして、悔しかったってことじゃない？」
「悔しい……？」
「うん。俺たちにサッカーで負けて、悔しかったんだと思う。でも今日、こんなにいい試合ができて、きっと気持ちがよかったんだよ！」
松風の言葉に、私は開いた口が塞がらなかった。私たちを煽っていると受け取れなくもないが、私はそれどころではなかった。胸の中で絡まっていたものが、突然ピンと張り詰める。
―― 君は、どうしてエルドラドに従ってるの？ サッカーが嫌いなの？
――俺、そういうふうには思えないんだ。
――だって君、この前の試合で、俺にボールが当たらないようにわざと外したよね。
松風天馬の言うことは、思い返せば全部図星だった。私は、ルートエージェントとして参加する試合を、仕事だと捉えていた――つもりだった。
親善試合での私の仕事は、松風たちを再起不能にすることだった。それをしなかったのは、プレーヤーとしてのプライドが許せなかったからだ。
――サッカーが好きだから。
それなら、一回戦で負けて大泣きしたことや、シュートコマンド２４を見て、もやもやしていたことも合点がいく。
悔しいのは、仕事じゃなくて本気だったから。勝ちたかった。大好きなサッカーで。そして、もっと強くなって、合体技を自分の手で完成させたかったからからだ。
そんな単純な理由だったのか、と途端に悩んでいた自分が馬鹿らしくなった。思わず緩んだ口元を、慌てて手で隠す。
アルファが戸惑った様子で口を開いた。
「だが、私にとってサッカーは、戦いの手段でしかない」
「そう、なの……？」
「そのはずだ……」
そう言うアルファに、隣にいたエイナムが「だけど」と声をかける。見たことがないような、優しい表情で。
「それもいつの間にか、変わっていたのかもしれませんね」
エイナムがアルファをじっと見つめ、彼の返事を待つ。アルファはエイナムの視線を受け止めると、小さく「そうか……」と呟いた。
「どう？ サッカーのこと、ちょっとは好きになった？」
天馬の問いかけに、アルファは答えた。
「イエス」
その日、私は初めてアルファの笑顔を見た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるま(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます。とても励みになります！ bizyuさんもあたたかくしてお過ごしください( ¨̮ ) (12月19日 0時) (
レス) id: 99f9ea638a (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて時間も忘れるほどに何度も読み返しています！これからもお身体には気をつけて頑張って下さい！ (12月18日 21時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるま | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2023年11月30日 22時
