ep.50 ページ3
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ラグナロク前日。練習はつつがなく進行し、休憩時間にスタジアムから出ていたときのことである。立っていられないほどの衝撃が、エルドラド本部を襲った。
「緊急事態発生。緊急転移システムを起動します。緊急事態発生――」
数日前にも聞いた警報が鳴り響く。転移する直前、私たちの立っていた通路が、あっけなく崩壊していくのを見た。
赤い西日が、エルドラド本部の亡骸を照らしている。ついさっきまで、食事をして、睡眠をとり、サッカーの練習をしていた場所があっけなく崩れ去った。やり場のない怒りが、腹の中を駆けずり回る。
「やあ」
穏やかな声が、頭上から降ってきた。本部を破壊した張本人――フェーダの面々が、瓦礫の山の上から私たちを見下ろしていた。逆光になって表情が読みづらく、不気味に微笑む口元だけが嫌に目についた。
「ラグナロクの開会式セレモニーは、楽しんでいただけたかな？」
フェーダの皇帝を自称したＳＡＲＵが、こちらの神経を逆撫でするような気取った声で言った。
「サッカーで勝負するんじゃなかったのか！」
「もちろんこれからサッカーをやるよ。世界を変える最終戦争――ラグナロクをね」
ＳＡＲＵが右手を上げると、他のフェーダのメンバーも彼に倣った。すると、あとは朽ちるだったはずの瓦礫が一斉に浮かび上がった。それらは意思をもったように集まると、エルドラド本部があった場所を奪うように、物々しい建造物を形作った。
「さぁ、できたよ。決戦の舞台、ラグナロクスタジアム。ここが新しい世界の始まりの場所になる」
ＳＡＲＵがラグナロクスタジアムの説明をしているが、頭に入ってこない。セカンドステージチルドレンの力をもってすれば、巨大なスタジアムが出来上がってしまうという事実に、打ちのめされていた。今までの破壊活動など、彼らにとっては造作もないことだったのだ。
「では、第一試合は明日。しっかり準備しておいてね。……まぁ、無駄だろうけど」
ＳＡＲＵは「明日が楽しみだよ」と言って、その場から去っていった。――その途中で、一度だけ私たちのほうを振り返った。意味ありげな表情に首を傾げていると、近くで呻き声が上がった。
「うぅ……っ」
声のしたほうに目をやると、フェイが自身の頭を抑えてその場に倒れ込んでいた。
「フェイ、どうしたの！？」
「フェイ！ ――フェイ！！」
菜花の悲鳴が、あたりに響いた。
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はるま(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます。とても励みになります！ bizyuさんもあたたかくしてお過ごしください( ¨̮ ) (12月19日 0時) (
レス) id: 99f9ea638a (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて時間も忘れるほどに何度も読み返しています！これからもお身体には気をつけて頑張って下さい！ (12月18日 21時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2023年11月30日 22時
