ep.62 不安 ページ15
「では、なぜ？」
「……大事な試合に負けて、ちょっと悔しかっただけ」
「……」
じっと見つめられ、落ち着かない気持ちになった。「ちょっと」というのはなけなしのプライドによって脚色が入ったかもしれないが、嘘はついていない。
「心配することはない。次の試合、必ず我々が勝利する」
アルファは何の迷いもなく、きっぱりと言い切った。これだけ自信があるのなら、もしかしたらチーム０２はうまく協調しているのかもしれない。
「私たちのチームもだ。必ず仇はとる」
「……ありがとう」
レイザの力強い言葉に、心配をかけた実感が湧いてきた。何だか申し訳なくなって、肩をすぼめる。
「変なとこ見せてごめん」
「部下の管理も私の仕事だ」
ビジネス感満載のアルファの言葉に、私は「そっか」と言いながら少し笑った。
敵の実力はわからない。しかし、チーム０２にはプロトコルオメガのキャプテンが揃い踏みだ。力を合わせればきっと――。
その日のうちに、鬼道監督を通じて議長から話があった。フェイがＳＡＲＵとともに姿を消してしまい、連絡も取れないこと、そして、ＳＳＣ遺伝子制御ワクチンが完成したこと。
セカンドステージチルドレンは、特別な能力を持っている代わりに、寿命が短い。その名の通り、大抵の者が大人になる前に命を落としてしまう。
そこで、能力を失う代わりに、能力を持たない人間と同じ寿命を手に入れることができるワクチンを作ったのだ。
ラグナロクに勝った暁には、このワクチンをフェーダのメンバーに打つことになるらしい。
身体を作り替えてしまうものを引き合いに出すのは、と一瞬思ったが、度重なる街の破壊、そして向こうの要求が世界最高意思決定機関の実権ということを思い出し、エルドラドの判断も仕方のないことなのかもしれないと考えることにした。
――しかし、たとえエルドラドが勝って、フェーダの力を奪ったところで、本当に世界は平和を取り戻すのだろうか？
ワクチンによって超能力を制御させるのは、かなりの荒療治に思える。アイデンティティになっているであろう超能力を奪ったエルドラドを、彼らが憎まないわけがない。それに、セカンドステージチルドレンは、フェーダ以外にもいるはず。
力を失ったって、終わりではない。
そんなに簡単な話でもないということが、私の杞憂だといいけれど。
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はるま(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます。とても励みになります！ bizyuさんもあたたかくしてお過ごしください( ¨̮ ) (12月19日 0時) (
レス) id: 99f9ea638a (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて時間も忘れるほどに何度も読み返しています！これからもお身体には気をつけて頑張って下さい！ (12月18日 21時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2023年11月30日 22時
