第481話 気持ちと力 ページ31
「奈々、ドリンクを頼めるか」
「あ、うん」
続いて、使用済みのドリンクボトルやタオルを片付け、整理をしていた奈々の許に立ち寄ったのは、仲間達へのアドバイスを一通り出し終えて来たらしい神童であった。
ちらりとフィールドを見やると、雨宮は未だ仲間達と和気藹々と言葉を交わしている。彼は元々人当たりが良く、雷門イレブンに溶け込んだのは、加入してすぐの事だった。
「ねえ、拓人……」
「…………? どうしたんだ?」
水分補給の途中で不意に奈々から呼びかけられた神童は、傾けていたボトルを縦にして、口に含んだ分だけドリンクを飲み下す。
そうして会話が出来るようになると、彼女の言葉の先を促すための疑問を投げかけた。するとグラウンドに視線を向けたままの奈々が、思い詰めた表情で、ぽつりと話す。
「皆の記憶が無くても、皆の力になれる方法って、あるのかな?」
「え?」
今でも思い返してみれば、心当たりのない心当たりが、幾らでも見つかるのだ。
例えば雨宮の事もそう。過去に何があってか、他の選手と比較して、姉であるAに対し強い敬意を払っているように感じた局面があった。
それから、さっきの松風の件に関しても。もしも彼に関する記憶が自分にあったなら、今の彼にとって必要な答えが、容易に理解できたのだろうか。
「……私、どうしたら皆の力になれるのかなって……ずっと考えていたの。でも、何も出来なくって……何もしていない自分が、凄くもどかしくって」
不毛な思考だとわかっている。わかっているが――思いながら、奈々は目を伏せた。
同じ部活で、自分と松風に先輩･後輩の立場としての接点があった記憶は無いが、先程のように、いざという時に後輩の悩みに答えられないのが、なんとなく情けない。
松風達は、記憶は無くとも、そんな自分を頼りにしてくれているのだ。出来る事なら応えたいと思うのに、此処に居るのは答えを持ち合わせていない自分。
――暫し黙って話を聞いていた神童は、彼女を安心させるように微笑んで見せた。
「そんなに思い詰めなくても、今だって奈々は十分、俺達の力になってくれている。マネージャーの仕事を熟してくれている事もそうだし、仲間の事を思うその気持ちも」
「……そうかな。……でも……」
「奈々。俺達が中世フランス時代に渡った時、お前が居てくれたお陰で、俺が――俺や霧野が、どんなに救われた思いがしていたか……わからないか?」
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moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。楽しみに待ってます。 (2022年2月19日 9時) (
レス) id: e9f0e4b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人 - 凄い久しぶりに見に来たけどやっぱ一気に見ちゃいますね！更新したかなー？ってぐらいでまた来ますね(●´▽`●) (2020年8月12日 21時) (レス) id: 7c87d58c6d (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - 彩夏さん» お久しぶりです〜! いつもコメントいただけて嬉しいです! ありがとうございます! (2020年7月10日 23時) (レス) id: 9770b7b01c (このIDを非表示/違反報告)
彩夏(プロフ) - お久しぶりです！更新お疲れ様です！ (2020年7月10日 8時) (レス) id: e2a9603a24 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - かなりさん» またまたコメントありがとうございます〜! 大切に閲覧くださって本当に有難いです……。なかなか早く更新できなくて申し訳ありません;; 体調は大丈夫ですのでご心配なく! (2020年5月30日 22時) (レス) id: 9770b7b01c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フェイル | 作成日時：2019年9月14日 7時
