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In this night. ページ1
物心が付いた頃から、俺の世界は五つ年上の姉と、双子の弟が全てだった。生活は楽ではないし、日銭を稼ぐのは疲れる。けれどあの二人が傍で笑ってくれさえすれば、俺は盗みだって殺しだって笑って働いたろう。でもそれくらい、俺にとってあの二人は大切な存在だったんだ。
だから、どうして、あの夜、俺は、
耳元で、鬼が囁くように言う。
自分が助かったんだ。何が不満なんだ?
それは揶揄いにも似た言葉だった。声は酷く楽しそうだった。
ハッと、まるで何かに弾かれたように後ろを振り返る。また惑わされたのだと思った。しかし己から伸びる影は、カカ、と正直に笑って月を見ていた。
だから、どうして、あの夜、俺は、
鬼になりたいと、自分から願ったのだろう。
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作者名:優 | 作成日時:2020年5月24日 5時