詐欺師 TheLastBorder3 (ページ24)

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苦戦ページ24

そんなメイドの手には、黒い大きな剣が握られていた。デモンブランドという名のその大きな剣は、獰猛な意識を芽生えさせるかのように禍々しく月に照らされている。

「君がそのつもりならば、私も本気で戦わせてもらおう……ニャル！」

城を操り自身の周りに囲いを作る。正しく城壁といわんばかりの強固な壁である。

「魔王、なぜ分かってくれないのですか……？」

メイドは、それさえも意図も容易く突き破ってくる。しかし、魔王にはそれが好都合だったのだ。

「そら、喰らえ！」

力み、全力で魔力を放つ。ほとばしる電流のようにニャルの足元を襲い、城の半分の床をつき抜けさせた。幸いにもクレアたちに怪我は無かったが……

「魔王、出ていくなど許しませんよ！」

それはメイドも同じだった。
倒れるどころか、魔王の目の前へと迫り、拳を握った腕を魔王へ鋭く伸ばす。

「ぐっ……！」

元々非力である魔王は、それをかわすことができるわけもなく、モロに腹へ受けてしまった。それが効いてしまったのだろうか、苦しそうにその場へ崩れる。

「ニャルがここまで強いとは……」

自分のメイドとは、一度も力比べをしたことがなかった彼はメイドの力量など知る由も無かった。
それが災いしたのだ。まるで無知なまま挑んでしまったことと同じ……

しかし、それでもクレアが状況を分析できたことだけが救いだった。
詐欺師であったクレアの、最大で最強のステータス……それは彼女の頭の回転の速さと、臨機応変さのみだった。

「カレン、あなた本当に強いのね」

「色々と恵まれてる、そんな熾天使だからね」

カレンの腕の中には、ぐったりとした様子で抱えられているメイドが一体。そのメイドは満身相違であったのだが、カレンは涼しそうな顔をしている。

「いつからカタがついてたんだ？」

「そうだね～、君たちには分からないと思うけど、規模の大きすぎる戦いになりそうだったから違うところで喧嘩をしていたんだ……」

カレンが目を向けた方向には、大きな穴が空いた城の壁が脆く立っていた。いつの間にか外へと出ていたのだ。

「でも流石に疲れるよ、ニャルちゃんも強くなったもん……」

彼女のその言葉は説得力は皆無だったが、一人で四盾という訳にもいかないようだ。
そのなかで、クレアが掴んだチャンスはひとつ。
メイドは火が苦手である。