詐欺師 TheLastBorder3 (ページ22)

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闇に飲み込まれたメイドページ22

カレンは拳から人差し指を伸ばし、その場でくるくると回した。

「ニャルちゃん、もしかしたら呼んだら来るかもね！今呼んでみようよ」

そう言ってカレンが息を深く吸う……のを私は止めた。ここで戦闘を始めても場が荒れるだけだと感じたために。

「どうせなら広いところへ行こう。そっちの方が本気で戦えるだろう？」

その言葉を受け止めてくれたカレンは、立ち上がって部屋から出ていこうとする。慌てて追い掛けた先は、崩れた階段が部屋の中央に掛かっている大広間だった。生活感も何もなく、先へ大きな扉があるその場を見る限り、そこは玄関であることが分かった。
右左に色鮮やかなステンドグラスが貼られており、外から月の鮮やかな輝きが部屋を刺してきた。

「……魔王の部屋はフロントへ直結なのか」

「いいや、私がその都度部屋の配置を変えているからな……必ずしもここへ繋がるとは限らない」

なんだなんだ、このチート野郎。魔法の力で部屋を動かすのか……

「さ、こっちへ来て！広いところじゃないとダメなんでしょう？」

カレンがフロントの中央から私たちを手招きしている。玄関扉の隣の壁にはひとつだけ明かりが灯っているランプが掛かっていた。

「……さ、呼ぼうか！」

「いえ、呼んでいなくとも最初から聞いていました……ここへ来ることも……」

いつからそこにいたのか、あのメイドがステンドグラスの光の元へ立っていた。光に隠れるように、顔が陰りに染まっていて、余計に陰気な雰囲気をかもし出していた。

「魔王様……部屋へお戻りください」

「……断る、と言えばどうなるのだ？」

魔王がニャルに体を向け、そう言う。

「部屋へお戻りください……！」

一方の彼女は、これ以外何も口から発することが無かった。その様子は、怒っているようにも感じた。

「……部屋へお戻りください！」

そして彼女は私たちへ向かって飛び出してきた。全員が四方へ散った。私の場合は、この力が無ければ避けられないほどに速かった。速さを制御できずに壁へと激突してしまったが。

「ニャルちゃん、どうしたの？」

「今のあいつはニャルちゃんではない、ニャルラトホテプへと引き戻されている！」

彼女の体からは、無数の触手が伸びてうごめいていた。毒々しく、気味の悪い触手たちが私たちを喰らおうとしているように感じた。
そしてその姿は……四体に増えていた。