詐欺師 TheLastBorder3 (ページ15)

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銀髪の男ページ15

その男は私をソファへと座らせ、自分はその隣へと座ってきた。執拗にくっついてくるものだから、その都度、横へずれていたが彼はさらに体を近づけてくる。

「……やめろ変態」

「君みたいな綺麗な顔をしている人はなかなかここには来ないからな……どうせならもう少しくっつきたい」

気味の悪さを強く感じ、たまらずソファから立った。その男の顔は、まじまじと見なくても美しいのであるということは分かるが、顔が良ければなんでもいいという訳ではないのだ。

顔が良ければ、ね……

『確かにスタイル良いし、顔もいいと思うんだけどさ、なんかしょぼいんだよね』

会場でオーディションを受ける私一人、そんな環境の中で大勢のスタッフに批判を喰らった。どの人の顔も、口では僅かに微笑んではいるが、その目は私をさげすむような恐ろしい目の輝きをしていた。

「なんていうか……現役モデルの劣化版的な感じにしか見えなくてさ」

分かってるよ。服もメイクも見よう見まね、オリジナリティの欠片もない、そんな既存のテクニックの焼き直しばかりをしてきた。個性のひとつも生み出せない。

私にはモデルになる才能なんて微塵もなかったんだ。

「……どうした、顔色が良くないぞ」

また意識を戻したときには、銀髪の男の顔はすぐ目の前にあった。驚きのあまり、思わずビンタをしてしまった。

「黙っとけ。顔さえ良ければ、全て良いってもんじゃないんだよ」

「なんとも気の短い女が……」

やれやれというようにゆっくりと首を横に振るその男。
……いや、こいつ顔だけじゃない。仕草の一つ一つが妖艶で美しい。気障臭く見えるが、普通の女ならこれだけで落ちる女もいるだろうな。

……なんだろう、動きを見ているうちに……私も男の姿が……素敵に見えてくる……

「……なんで私には……」

知らぬ間にこんな言葉が口から出てきた。
ひょっとしなくても、私は彼に嫉妬していたのだ。

滑稽だ。名前も知らぬ、ましてや女ではなく男である彼に嫉妬するなど……

私はどうかしているのだろうか。