検索窓
今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:25,420 hit

四話 ページ5

「できた! これでその顔もちょっとはマシになったな」

「わあ、お兄ちゃんとお揃いだ」

「バカ、よく見ろ。模様が違うだろ。こいつとお揃いなんかにするものか」

 それならわざわざメイクしなきゃいいのに。でも面白いからいいか。
 
 その日の夜、Aはこっそりと家を抜け出した。
 ちょっと会いに行くだけ。すぐ戻る。
 共同墓地に着くと多くの人々が先祖の墓に供え物を捧げ、祈っている。
 彼らの間を通って一番奥にあるデラクルスの霊廟に小走りで向かい、割れた窓から中を覗きこむ。
 あれ? 何で割れているの?
 そう疑問に思ったが、写真の下に飾られた白いギターを目にして、気づけば窓から霊廟の中へと侵入していた。
 ちょっと触っても大丈夫かな。
 棺に上ってギターを手に取り、床におりてからおそるおそる爪弾く。それだけでAは尊敬していた高祖父に少しだけ近づけたような気がした。

「おい、まただ! またギターがない!」

 突如、外から聞こえてきた声にAは我に返った。まずい!
 ギターを置いて右往左往している間に霊廟の扉が開き、懐中電灯を持った管理人が入ってくる。

「あの、違うんです! ただ触って……」

 しどろもどろになるAの言葉に耳を貸さず、管理人はギターを拾って元の位置に戻した。

「まったく、一体誰の悪戯だか」

 ブツブツと文句を言いながら彼は立ち尽くすAのほうに歩いて行き――その体を通り抜けた。

五話→←三話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
30人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 更新頑張ってください!! (2020年2月22日 4時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 娘であったお婆ちゃんが悲しそうにしていたのは少し切なかったですがそれでもひいお婆ちゃんは無事にお父さんとお母さんの側に行けたので良かったと思います。そして良い家族に囲まれて幸せだったと。 (2018年5月12日 10時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 私も今回のディズニー映画は漫画が本音を言ってしまえば可愛くないのでそれでもディズニーは好きなので暇潰しとして見ようと思ったんです。そしたら凄い感動したので見て良かったなと今では思います。ただ残念な事に家族の一員であるひいお婆ちゃんが亡くなっちゃって (2018年5月12日 10時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)
ミラージュ・アリーゼファー(プロフ) - ポチさん» 観終わったらまた観たくなる映画でした!ほのぼの系かと思いきやミステリー系で、予告と違っててはまりました! (2018年5月11日 21時) (レス) id: a7910e6428 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 初めまして。リメンバーミー9回も見たって本当ですか?凄いですね。私も一昨日見に行きました。生きていた頃のヘクターが格好良かっただけでなく、ストーリーも凄い良かったので感動しました。私ももう一回見たいなと思いました。 (2018年5月11日 20時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミラージュ・アリーゼファー | 作成日時:2018年4月8日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。