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三話 ページ22

「入ってこないでね」

 何故か無言でついてくるアダンにピシャリと言い放ち、扉を閉めて棺へと近づいた。

「パパ・エルネスト、うるさくしてごめんね。あれは僕の義理の兄のアダンだよ」

 夜のことを考えて少し緊張しながら石造りの蓋にそっと触れる。
 彼は今、どうしているだろう。

「僕、将来ミュージシャンになろうと思っているんだ。あなたのように自然と人を魅了出来るような、そんな存在になりたい」

 また来るね、とAは棺に背を向けて霊廟を出た。

「わっ、まだ居たの!?」

 外で待ち構えていたアダンを見てAは呆れたように首を振ると「今日は訳あって友達の家に泊まる、って伝えといて」と言ってその場を後にした。






 マリアッチ広場には“死者の日”ということもあって昼間から音楽を演奏している人が多く、その中でならちょっと歌ってもさほど目立たないだろうと思っていたがそんなことはなかった。
 拍手の音にギターから視線をあげたAはいつの間にか目の前に沢山の人が集まっていたことに気づいて硬直する。なにしろ人前で演奏したのはこれが初めてだったのだ。

「いいぞ!」

「素晴らしいわ!」

 だが思いがけず賞賛の言葉を浴びせられ、Aは自然と笑顔になった。


「ねえあなた、ミュージシャンになったら?」

 広場から出ようとしたAは先程自分の曲を聴いていた女性に呼び止められた。

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(プロフ) - 更新頑張ってください!! (2020年2月22日 4時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 娘であったお婆ちゃんが悲しそうにしていたのは少し切なかったですがそれでもひいお婆ちゃんは無事にお父さんとお母さんの側に行けたので良かったと思います。そして良い家族に囲まれて幸せだったと。 (2018年5月12日 10時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 私も今回のディズニー映画は漫画が本音を言ってしまえば可愛くないのでそれでもディズニーは好きなので暇潰しとして見ようと思ったんです。そしたら凄い感動したので見て良かったなと今では思います。ただ残念な事に家族の一員であるひいお婆ちゃんが亡くなっちゃって (2018年5月12日 10時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)
ミラージュ・アリーゼファー(プロフ) - ポチさん» 観終わったらまた観たくなる映画でした!ほのぼの系かと思いきやミステリー系で、予告と違っててはまりました! (2018年5月11日 21時) (レス) id: a7910e6428 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 初めまして。リメンバーミー9回も見たって本当ですか?凄いですね。私も一昨日見に行きました。生きていた頃のヘクターが格好良かっただけでなく、ストーリーも凄い良かったので感動しました。私ももう一回見たいなと思いました。 (2018年5月11日 20時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミラージュ・アリーゼファー | 作成日時:2018年4月8日 23時

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