リメンバー・ミー もう一つの物語

五話 ページ11

デラクルスは胸ポケットから写真を取り出してAに渡した。

「この女性はアマリアか。だとすると君は……？」

　写真が確かに自分のものだと確認したAは一拍置いて言った。

「僕はあなたの、孫の孫です」


＊



「でも驚いたよ。もう一人いただけでなく君も生者の国から来たとは……」

　事情をある程度知ってもらえたAはもう死者のメイクを落としている。

「僕もミゲルがいるとは思わなくて……なんだかいろいろ共通してるなぁ」

「……あの子に赦しを与える時、花びらが光らなかった気が……」

「え？」

「いや、なんでもない。こっちの話だ」

「あ、写真落ちたよ」

　先ほど取り出した拍子にもう一つの写真が胸ポケットから斜めに出ており、何かのはずみで落ちたそれを渡すと一瞬デラクルスの表情が強張った。

「ご友人、ですか？」

「……ああ。もう二度と会えないが」

「二度と？」

「この世界の住人は生者に忘れ去られると消えてしまうんだ。つまりは二度目の死だ。友も、もうじきそうなるだろう。私にはどうしようもできない」

　死んでもまた会えなくなるなんて……。そんなのあまりにも辛すぎる。

「あなたに消えてほしくない……」

「ハハッ……心配はいらない。私のことを語り継いでくれる人は沢山いる。その人たちがいつまでも忘れないでいてくれる限り、私はここに存在し続けるだろう。だから君も死ぬ前に出来るだけ沢山の人の記憶に残るようにするんだ。そうすれば、いつかまた会える」

　君が望むならずっとここに居てもいい、と彼は続けた。

「だがもしも生者の国に戻るなら私はいつでも
――君が死ぬのを待っているよ」

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