【ツルネ】ハバタケ 〜The Lost Memory〜

8.説明会 ページ9

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｢そうだ、A。私、弓道部に入ることに決めたよ」


その日の帰り。
支度をしてると、梨可が声を掛けてきた。


｢それで今日、弓道部の説明会があって、私も経験者代表として出るんだ。よかったら来てほしい｣

｢え!? そうなの!? すっごい、すごいね行く行く！｣


きっと、森岡先生が言ってたのだよね。
元気よく手を上げると、梨可も口元を緩める。


｢ありがと。じゃあ、私は準備があるから先に行くよ。弓道場で待ってる｣

｢うん！｣


梨可が出るなんて、楽しみだ。
絶対、見に行かなくちゃ。




ーーーー




｢ち、遅刻するー……!!｣


その30分後。
私は弓道場を目指して全力ダッシュしていた。




梨可が「じゃあ、私は準備があるから」と先に行った後、帰りの支度の続きをしながら今日発売の文庫本の新刊のことを考えていた私は、弓道部の説明会をすっかり忘れて帰ろうとしていたのだ。


そのままぼーっと昇降口で靴を履き替え、裏門へ向かう。
運動部どこにしようかなー、なんて考えながら自転車置き場の横を通ったとき、


｢無理だから｣

｢無理じゃないって！
行こうぜ、弓道部の説明会！｣

｢いやだ｣


という会話が、聞こえてきた。
その瞬間、私はようやく思い出したのだ。



──あっ！ 弓道部の説明会!!



気づいた私は、大急ぎで引き返した。

かくして私は、弓道場を目指してダッシュしているのであった。




ーーーー




弓道場の入口から中をのぞくと、説明会はまだ始まっていなかった。胸をなで下ろして弓道場のいちばん隅に座る。


弓道、ね……。


周囲の会話を聞く限り、袴に憧れてとか、武道について知らずに入る人が多そうだ。

だけど、武道は道だと理解してくれる人は、実際どれくらいいるのだろうか。


……いや、誰でも最初は初心者だ。

そこはまあ、いっか。




ーーーー




そして始まった説明会。

私は、そのまま弓道場の隅に座っていた。


｢えー、弓道部説明会に、よく集まってくれたのう。ありがとう。ああ、膝は崩してくれて構わんよ｣


森岡先生のその言葉に、制服姿の人の大半は、ごそごそと座り直す。


しかも、先生が挨拶をしっかりと言ったばかりなのに、返事は｢はい｣ではなく｢はーい｣だし。
武道をお遊び程度に見ているのか、せいぜい自称進学校レベルの偏差値帯だからか……ここから見える限りほぼ全員、全く気が入ってない。

この中に入ったら、真面目にやらない人に対してキレそうな気がするよ……。


そう思いながら右隣をちらっと見る。そこには山之内くんと、彼に強制連行されたらしい鳴宮くんがいた。

9.予定外→←7.涙の帰り道

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今日の弓道男子

如月七緒

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