【ツルネ】ハバタケ 〜The Lost Memory〜

43.小さなシェフが大わらわ ページ46

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今日の夜ごはんの分担は、

準備:私、鳴宮くん、如月くん

後片付け:小野木くん、竹早くん、山之内くん


……と決まった。


竹早くんと山之内くんは料理が苦手、小野木くんは手際がいい、という理由で片付け係に任命され、残った私達は準備、ということだ。


……たった3人で10人前のカレーとサラダを作れと。

なんと無茶な。



したがって、夜多神社の狭いキッチンは、調理をしながら指示が飛び交うこととなった。
さながら、どこかのレストランの厨房だ。当然、調理実習のように雑談する暇など無い。


｢瀬戸名、調理器具洗ったら野菜切ってくれ｣

｢OK。じゃあ鳴宮くん皮剥けたらここ置いて！｣

｢ああ｣

｢如月くん、サラダのレタスお願い！ キュウリも切ったら持ってく！｣

｢ラジャ！｣


人参の皮を剥く音。

キュウリを切る音。

レタスをちぎる音。

その他、無音。


｢キュウリあがり！ レタスは!?｣

｢ごめんまだ！｣

｢じゃ、隣にキュウリ置いとくね！｣

｢お願い！｣

｢瀬戸名、玉ねぎある!? 1個足りない！｣

｢はーい！｣


よかった、皮むきの段階で気づいてもらえるとフォローしやすい！

とりあえず、冷蔵庫の中を探そう。
玉ねぎ、玉ねぎ……と内心で唱えながら引っかき回すと、果たして小ぶりな玉ねぎが1つ出てきた。


｢はい、玉ねぎ！｣

｢ありがとう。あと、この人参お願い｣

｢はいはーい｣


トントントントン、とリズムよく切っていく。
あ、今日は上手くいってる、調子いいかも、なんて思った所に、横からじゃがいもが追加された。


｢はい、じゃがいも2個｣

｢了解。ていうか、鍋ちっさ！ 大きいのどこ!? 滝川さーん！ ちょっと鳴宮くん、滝川さん呼んで！｣

｢わかった｣

｢野菜、剥いておくね！｣

｢ごめん瀬戸名、お願い！｣


玉ねぎの皮をペリペリ剥いてると、後ろから声をかけられた。




｢ねえ、Aちゃん｣





｢ん？ どうしたレタス足りない？｣

｢ううん、レタスは盛り付けて今キュウリ｣

｢じゃあ、どしたの？｣


重ねて聞くと、如月くんは少しためらった後、言いにくそうながらも口を開いた。



｢……Aちゃん、鳴宮や部長と中学同じ？｣






心臓ごと、全身を冷やされた気がした。




ーーーー




怖かった。
そうだ、どこでどんな情報がリークされても、おかしくないんだ。“どんな情報でも”。

とりあえず、全力で平静を装う。あまり事実が知れ渡ると、彼らの沽券にも関わるのだ。何も無いことにしてしまった方がいい。

ごめんなさい如月くん、少し誤魔化します。

44.雑談は、密かに苦痛を帯びて→←42.矢渡し

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今日の弓道男子

如月七緒

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