【ツルネ】ハバタケ 〜The Lost Memory〜

41.そして、合宿当日 ページ44

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合宿当日。

いつもの散歩ルートを、今日は1人で歩く。まだ辺りは静かで、ほとんど人気は無い。でも私は、この朝特有のぴんと張り詰めた空気が好きだ。


桐先に通ってたときは、いつもこれくらいの時間に朝ごはんを食べてたっけ。
風舞は家から近いから、校門通過の8分前に出発すれば間に合う。だから、最近ついつい寝坊がちになって、今日は心配で目覚まし5つも掛けたっけなぁ。




ーーーーー




神社の石段を上ると、既に誰かがいた。誰だろう。


｢あ、瀬戸名さんだ！ おはよう！｣

｢山之内くん！ おはー！ 早、い……ね…………｣


おい………と、私は思わずツッコミを途中で放棄した。


｢山之内くん、その服……｣

｢あ、下僕Ｔ？ マサさんに言われて着てきた！｣


……そうですか。


｢ところで山之内くん、カップケー……｣

｢カップケーキ!? 食べたい!!｣


食らいつくのが速い。
そこまで美味いか……？ いささか疑問。


｢ねぇ、何味!?｣


目を輝かせる山之内くん。少し悪戯心が沸いてきた私は、冗談だし、と変なことを言ってみた。


｢うーん……すき焼き味卵入り？｣

｢んえぇっ!?｣


思いつく最大級に不味そうなもの(私基準)を言ってみたら、山之内くんは私の予想以上に青ざめる。


｢えっ、ごめんなさい冗談ですチョコ味バナナ入りです嘘ついてごめんなさい!!｣


慌てて弁解すると、山之内くんも顔の前で両手を振って、


｢いや気にしないで！ おれが頭悪いだけだから！｣

｢い、いえいえ！ 私の冗談が下手なだけだから！｣

｢いやいやいや！｣

｢いえいえいえ！｣


2人して不毛極まりない会話をしてると、


｢おっはよーう！ ……って、2人とも何してんの？｣

｢あ、ユウ……｣

｢花沢さん……｣


固まる3人。

まさに、三すくみ。




フリーズを解いたのは、山之内くんの一言だった。


｢ところで、カップケーキ……｣

｢……あ、あぁ。ごめんね。はい｣

｢ぃよっしゃあ！｣


カップケーキを持ったまま両手を突き上げる山之内くん。


｢あぁこらこら。そんなことしたらケーキすっ飛ぶよ｣

｢うわぁ！ ご、ごめん……｣


今度は飼い主に叱られた犬みたいにしょげる。山之内くんは表情がコロコロ変わるから、なんかおもしろい。



その後、ユウに｢私も食べたい！｣とむくれられてしまったのは、また別の話。




ーーーー




合宿を始める前に、安全と無事を祈る｢矢渡し｣っていうのがあるらしい。

集合後にそんな話を聞いた私は、道場の隅で正座している、のだが……



｢…………は？｣

42.矢渡し→←幕間･とある日、SNSでの会話 (No Side)

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今日の弓道男子

如月七緒

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