40.全てが止まって (Side S) ページ42
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「──忘れてた、の」
俺の中で、何かが止まった。
目の前の光景が、全ての時間が、一瞬、止まった気さえした。
「……そうか」
俺は、それしか言えなかった。
他に言葉を掛けようにも、どれも違う気がした。泣きじゃくる背中に手を添えることしか、できない。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい……置いていって、ごめんなさい……!」
Aが、泣いている。
2年ぶりに、久しぶりに、泣いている。
「私、後悔した……! 2人から、逃げた、のに……逃げきれなくて……しかも、愁くんを、1人にして……。
友達なんて、……嘘なのかも、って……」
「嘘だなんて……」
すると、Aはもっと頭を抱え込み、己の髪をかきむしる。
「なんでなの!? ナミくん、セイくん、Aって呼んでよ! 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ! ねえ、友達でしょ!? 私達は友達なんでしょ!?」
通行人が振り返るほどの大声。
だが、彼女の手は、肩は、声は、確かに震えていた。こぼれた涙が地面に染みを作る。
──ああ、だめだ。
どうしても恨んでしまう。
Aを悲しませ、寂しがらせる湊と静弥を。何もできない無力な自分を。
「俺は、絶対忘れない。2人も、きっと思い出す。だから、泣くな」
「っ……!」
Aは、堪えるように、唇を噛む。掌に爪が突き刺さるくらい、強く握りしめる。
「……確かに、髪かなり切って、眼鏡も変えた。喋り方も変わったよ。でも!」
静まったと思ったら、また地面に言葉を叩きつける。細い手が、俺の肩に縋り付く。
「どうしてなの!? 私達は友達だって言ったのに! なのに、違うの!? もう友達じゃないっていうの!?」
夕日を背に、訴えるように泣き叫ぶ。
「いじめられる子はいらないってこと!? 何が間違いなの!? なんでっ──」
「止めろ、止めるんだA……!」
とっさにAの肩を掴んで揺さぶる。
Aははっとして、目を見開いた。
しまった、痛かっただろうか……。
「愁、くん……?」
弱々しい声で呟き、俺を見上げる。怯えた表情で、こちらの顔色を伺うように。
それを見ていられなくて、俺は、目を伏せた。
「自分を責めるのは止めてくれ。Aが、友達が傷つくのは、もう見たくない。俺のためと思って、どうか止めるんだ」
血のにじんだ唇が、そっと震える。
「でもっ……ナミくん、セイくん……嫌だ……それでも、私はっ──!」
俺の目の前で、当時と少し姿が変わったあの子が、また泣き出す。
だから、俺もまた同じように、何も言わずに小さな肩に手を添えたのだった。
幕間・とある日、SNSでの会話 (No Side)→←39.崩れ落ちる
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Mashiro Lio(プロフ) - そうなんですね!私はこの間友達に相談したら、「いっそのこと全員分書いちゃえ!」って言われました笑笑 (2019年4月13日 17時) (レス) id: 6bdf3daa52 (このIDを非表示/違反報告)
芋ケッピー(プロフ) - 誰を落ちにするかは、私も悩みに悩みましてアンケートにて決まりました笑 (2019年4月12日 23時) (レス) id: 1297cf1d5a (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - ありがとうございます!実は誰落ちか未定&すごく長くなりそうな予感しかしないので少し不安(笑)なのですが、そう言っていただけるととても励みになります!ご期待に添えるよう精一杯頑張ります! (2019年4月7日 10時) (レス) id: 6bdf3daa52 (このIDを非表示/違反報告)
芋ケッピー(プロフ) - 続きが気になります!湊くん、静弥くん、愁くんとの関係性もまたまた気になります!更新楽しみにしています^_^ (2019年4月7日 8時) (レス) id: 1297cf1d5a (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - メイリさん» ありがとうございます!こうやって小説上げるのは初めてなので至らない所もあるかとは思いますが、ちょっとずつ頑張っていこうと思います! (2019年4月2日 7時) (レス) id: 6bdf3daa52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mashiro Lio | 作者ホームページ:http
作成日時:2019年3月4日 22時