9話 ページ10
(side Rei Furuya)
深夜_____。
「疲れたな………」
俺はそうやって愚痴を溢すが、すぐにはっとした。
駄目だ、仮にも今の俺は「安室透」であり、降谷零ではないのだ。
安室透の私立探偵としての仕事を終えた帰り道のことだった。
浮気調査という名前のデート(向こうの一方的な)を終えた俺はため息をついていた。
……なんなんだ、あの女は。
浮気調査とは名前だけじゃないか。
夫が浮気しているかもしれなくて心配しているのに、浮気調査を依頼した男と楽しそうに腕を組んで街中を歩き回る妻がどこにいる。
そもそも夫の方は結局浮気など微塵もしていなかったし、結局ただ俺があの女に振り回されただけで終わった。
そんな多大な疲労を被った俺は、早々に帰宅して寝てしまおうと思っていた。
しかし歩き進めていると、前の方からふらふらとおぼつかない足取りの人影が見えてきた。
……まさか酔っているのか?
冗談じゃない、絡まれるのは絶対に嫌だ。
俺は酒に酔った奴の怖さを知っている。
勿論、公安や探偵としての仕事で知ったのもあるが、何より一番は昔の友人だ。
俺がまだ公安になる前の話だが、俺には仲の良い友人五人がいた。
その五人で良く飲んだのだが、その中でも、伊藤和希という名前のやつは、酒に酔うと凄まじい酔い用を見せるのだ。
だから俺は、その酔ったと思われる奴の顔が見えた時、深い深いため息をついた。
向こうからやってくる、酔った人物。
赤みがかった茶髪に、翡翠色の目をした人物。
ふらふらと歩くその人物は、先程俺が考えていた
『伊藤和希』
まさしく、その人物だったのだ。
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作者名:神風 | 作成日時:2018年5月22日 18時