062:見えてきた CM ページ13
「ねぇ、一体どういうつもりなのか説明してよ」
福岡行きの飛行機を見送って
僕らは空港を後にした。
Aは不可解な顔で
何回も僕に同じ質問をしてくる。
「ただ、東京で遊びたいだけです」
「嘘。何か考えがあるなら…」
「あんまり深く考えないで、楽しみましょう」
「それに、福岡ならまだしも東京じゃソウル以上に…」
「婚約中の僕らが二人で旅行して何かおかしい事がありますか？」
「それは…」
こういう無謀な事はしないと思っていたのに。
言葉に詰まりながらも
目でそう訴えてくる。
なんだか懐かしい感触だ。
ホテルに着いてまずはﾕﾉﾋｮﾝに電話した。
何をしていたのか少し興奮してるみたいだ。
「東京バナナ古くないですか？」
『ﾁｬﾝﾐﾝがイメージしてるのと違うから！』
「は？」
『あれだよ！キリンみたいな柄のやつ！』
「はい分かりましたキリンですね。ところで今どこですか？」
『福岡』
うん、僕の予想通り。
やっぱりﾋｮﾝだ。
今までﾇﾅと着せ替えしてたとか何とか…
意味不明だけど、楽しんでるみたいだ。
『そういえば、さっき下で知ってる人に会ったんだよね。でも誰か思い出せなくて』
心臓がドクドクと音を立てる。
人は誰しも何か一つでも才能を持っていると僕は信じている。
ﾕﾉﾋｮﾝはいくつもの才能に恵まれてるけど、
本人が気付かないうちにそれを発揮している時がある。
これも、きっとその一つだ。
『しかも、俺を見てﾁｬﾝﾐﾝだと思ったみたいで。ﾁｬﾝﾐﾝとは合流したのかって聞かれたよ』
その才能は言葉では言い表せないものだけど、
敢えて言葉にするなら
「ﾋｮﾝはやっぱり持ってますね」
『え？何？金？！』
「東京バナナキリン柄了解しました」
Aが僕の前から消えたあの日から今に至るまで
たくさんの可能性を考えた。
例えどんなに小さな可能性でも 見落とす事なく拾い集めたつもりでいたけど
何も解決に繋がらなかったのは
可能性から一番遠い所にそれが存在していると
僕が思い込んだからだ。
『あの人誰だったかなぁ…本当に思い出せない』
「彼女は僕らがよく知るCAです」
『ああああっ‼そうだ！そうだよﾁｬﾝﾐﾝ！でもどうして見てないのに分かったの？」
「僕を誰だと？」
『あああスッキリした！これで眠れる！じゃAによろしく！』
確かに彼女は
僕の近くに存在していたのに。
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作成日時：2017年11月6日 23時
