検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:93,106 hit

070:ただいま。 ページ21

チャンミンが兵役を終えて私を迎えに来た日、

あの日も そうだった。

だけど今日の彼は それ以上に

私の記憶の中の彼と違って見える。

恥ずかしくて目を逸らしてしまうほど、

じっと 見つめられると

この数ヶ月

どんな思いで、私と過ごしていたのだろうと

心が捻れるほど痛い。






真っ赤に充血した目に

涙がぷっくり浮かんで

それが頰を伝い落ちても

チャンミンは ただ私を見ていた。







今の私たちは

ただ 本能のまま

時間を忘れて泳ぐ魚みたいだ。






「記憶がない私を…抱いた?」
「…一回だけ」





私には その記憶がない。

それも自分なのに

少し嫉妬してしまう不思議な感触。





「記憶がない私は、どういう私だった?」
「どうして?」
「今の私と違った…?」





私の子供じみた質問に

少し笑いながら

チャンミンはまた泣いた。





「もう二度と…僕を忘れないでください」
「…約束する」
「まぁ、忘れたとしても、Aは本能で僕を求めるでしょうけど」





「愛してます、A」





空が白み始めた頃

夢の狭間で

優しい声が 私を包み込んだ。





***





「もしもし…」
『あ、ね、姉ちゃん』





実家に電話を架けたら

まだ記憶がないと思っている弟の緊張した声が聞こえて

思わず吹き出した。





「佐々木さんに代わって」
『え』
「はーやーくー」
『か…かあ…母さん!姉ちゃんが!姉ちゃんが!蘇ってる!』





弟もお母さんも、お父さんも泣いた。

近いうちに一度帰るから。

そう約束して、

とうとう自宅にたどり着いた時

知らない人が2人、玄関の前で

私たちを待っていた。

小さなジョセフが女性の腕からぴょこんと飛び出して

一目散に私に駆け寄ってくる。





「ジョセフ、ただいま」





ジョセフと感動の再会を堪能して

改めて2人に向き合う。





「チャンミンに聞きました。記憶がない間、とってもお世話になったんですよね」
「オンニ…!」
「おばさん…!」
「ジュネ、ソユンさん、ただいま」





2人は嬉しそうに

私を抱きしめて、笑いながら泣いた。

まるで初対面とは思えないほど

私の目からも 涙が溢れた。

チャンミンは幸せそうに笑って

私たち3人を抱きしめた。

071:親友→←069:Re:vive CM



目次へ作品を作る
他の作品を探す

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
489人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作成日時:2017年11月6日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。