All of me. (ページ47)

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046:初めてではないページ47

「ｱﾒﾘｶ…？」
「うん」
「え」
「え？」

てっきり国内を旅行すると思ったのに

まさかこれからｱﾒﾘｶなんて突拍子もなさ過ぎて

返す言葉がない。

「アジアでは変装が必要ですから」
「ああ…確かに」
「僕は堂々としていたいけど、邪魔されたくない」
「…はい」
「バーリントンって街知ってますか？」
「…聞いた事ないです」
「昔ある人に、すごい田舎だけどのんびりしたいい街だって聞いたことがあって」
「ふーん…」
「季節的にすごい寒いと思うけど…」

滞在時間は3日。

明日の朝にはNYに着いて、それからまた飛行機で移動するらしい。

長いﾂｱｰを控えてるのに大丈夫なの？って聞いたら

ﾁｬﾝﾐﾝは優しい顔で笑った。

飛行機の中

とうとう眠れなかった私たち

小さい頃から今に至るまで

ﾁｬﾝﾐﾝは何でも話してくれた。

どこまで話をしたのか

それが何時ぐらいだったのか分からない

目を覚ましたら

向かい合って眠っていたらしい

少しだけ触れ合う指先

顔が熱くなったのは

きっと寝起きでﾋﾞｯｸﾘしたからだ。

眠っていても整っていると分る顔立ち

きゅっと結ばれた唇と

長い睫毛

規則正しい寝息

じっと見つめていたら

何か思い出せるかもしれない。

「…そう簡単じゃないか」

一体私は

どういうタイミングで自分を取り戻すのだろう。

「眠れましたか？」
「…は、はい」
「すぐにNYが見えますね」
「…そうですね」
「…今回はどちらに行かれるのですか？」

話しかけてきたCAの女性は

とても上品に微笑んだ。

「ﾊﾞｰﾘﾝﾄﾝ…です」
「いい街ですものね」

彼女がどうしてそう聞いてきたのか分からない。

でも近くなっていく世界最大の街を前に

確かに私はこれが初めてではないと

自分でも漠然とそう感じている。

「良い旅になりますように」

彼女が立ち去った後

まるで花が舞うように広がる香り

その仄かな香りですら

懐かしく感じるほどだ。

「…朝……？」
「あ………」

私たちの話声で起きてしまったのか

ﾁｬﾝﾐﾝのトロンとした大きな目が

じっと私を見つめている。

「A……」
「ごめんなさい…起こしちゃ…」
「A……」
「……………った………」

伸びてきた大きな手は

優しく私の頬を撫でて

そのまま肩に落ちたと思ったら

そっと引き寄せられた。

我に返って慌てて見上げたら

また規則正しい寝息が聞こえてきた。