021:リセット YH ページ22
「どうしてここにいるのですか」
「あんたには関係ないだろ…」
「ありますよ、あなたは全く懲りてないようだから」
「どういう意味…だよ」
「あなたが偶然にここに居合わせるなんてそんな都合のいい話ないでしょう」
「俺は仕事で…」
「ま、いいでしょう」
「Aは俺の事を覚えていたんだ!」
「…そうですか」
「あんたの事は…覚えてなかった」
「それがどうかしましたか?」
「開き直りか?」
「いいえ、例え僕の事を思い出せなくても彼女は僕の婚約者ですから」
「そんな事…記憶をなくしたAにどう言い聞かせるつもりですか」
「言い聞かせる?」
「混乱させるだけだ」
「勘違いしないでください。アナタは部外者ですから」
見た目より数倍あきらめの悪い男だ。
口で喧嘩させて チャンミンに勝てる奴なんていないのに。
「チャンミン、そろそろ行こう」
「待てよまだ話は…」
「アンタ嫁と子供いるんだよね」
「それは…」
「いい加減諦めたらどうなの」
「…」
「こういう状況だから言わせてもらうけどさ、これ以上Aに手出ししたらうちの事務所容赦しないよ多分」
「偉そうに…ただの芸能人だろ」
「はぁ分ってないなぁ。アンタ訴えられたら賠償金払えないよ」
「はぁ?」
「俺たちがいくらの商品だと思ってる?」
「…」
「とにかくこれ以上はやめときなって」
睨み合う2人を引き剥がして
俺はその男にタクシーを拾ってあげた。
「チャンミン、もしAの記憶が戻ってなかったら」
「戻っていても、そうじゃなくても、Aをあんな目に遭わせた犯人を突き止めます」
「…分かった」
案の定
Aの記憶は戻っていなかった。
それどころか、ジュネの事さえ忘れていた。
だけど
チャンミンはそれでも
笑っている。
数か月ぶりに見た
弟の笑顔を見て
ひとまず 俺は胸を撫でおろした。
「あの…私…」
「いい、無理して思い出さなくていい」
「でも…」
「僕は…シム・チャンミン。アナタの婚約者です」
「…婚約…者……?」
「おばさん良かったな、ハリーに会えて!」
「ハリー……?」
これから長い長い闘いになるのだろうか。
出逢ったばかりのジュネも
いつの間にかチャンミンに連られて笑っていた。
まるで 神様がリセットボタンお押したような
そんな変な感触。
だけど
「大丈夫だよ、A」
何も失っていないのだから。
きっと 大丈夫。
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作成日時:2017年5月20日 0時