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020:振り出し JN ページ21

何が起こったのか理解できなかった。

チャンミンさんがそのカフェの扉を開いて

次の瞬間には

Aを抱きかかえて店から出て来たのだから。

後ろには呆然と立ち尽くす

知らない男の人の姿。





「ジュネ、救急車を呼んでくれるか」
「え…」
「ジュネ、早く」





チャンミンさんの腕の中

おばさんは色を失くした顔で

眠っていた。

慌てて救急車を呼ぶ

声が震えて何度も裏返った。





「Aを…どんな目に遭わせたんだ!」
「…」
「記憶がないと言ってた!お前が彼女をこうしたんだろ!」
「…」





知らない男は

ボロボロ涙を零しながら

激しくチャンミンさんを睨みつけている。





「ジュネ、すぐに行くからAを頼む」
「でも素性を聞かれたら…」
「正直に言っていい」
「正直にって…」
「Aは僕の婚約者です」





到着した救急車には

おばさんと俺だけが乗った。

救急隊員たちは

さすがに俺たちを見てぎょっとした表情を見せた。

チャンミンさんは

叫び散らかしていたあの男を見下ろして

その隣で

腕組みをしたまま険しい顔のユノさんが

目線だけこちらに向けて

行け

ただ一言そう呟いた。





「この人…あの…記憶喪失なんです!」





俺はただ一生懸命に

救急隊員に彼女の事を告げた。

どういう関係かと聞かれて

チャンミンさんに言われた通り 正直に答えた。





「僕は友達ですけど…彼女はあの…さっきの…チャンミンさんの婚約者です」





一通り検査が済んで

手術などは必要ないと分かったけど

おばさんが入院することになった病室を見て

俺は腰を抜かすほど驚いた。

おばさんの病室の前には

スーツを着たおじさんたちが数人立っていて

とてもじゃないけど

俺は近付くことさえ怖い。





「ジュネ、ありがとう」





1時間ほどで

チャンミンさんとユノさんが現れて

俺は便乗するように

そっと2人の後ろから病室に入った。





驚いた事に

Aはベッドの上に座って

俺たち3人を見ていた。





「おはよう、A」
「…」
「もう大丈夫だよ」
「…」





チャンミンさんに優しく抱きしめられながら

おばさんは 小さな声で呟いた。





「あなたたち…誰…?」





記憶はリセットされ

そして

何もかもが

振り出しに戻った瞬間だった。

021:リセット YH→←019:記憶 CM



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作成日時:2017年5月20日 0時

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