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001:チャンミン (Haruka) ページ2

「ユノ、これチャンミンに持って行ってくれる?」
「お、美味しそう」
「うまくできたから」
「ありがとう、喜ぶよ」
「それと…気になるインスタを見つけたの」
「インスタ?」
「うん、帰ったらゆっくりね」
「…そうだな、そうしよう」





触れるだけのキスをして

爽やかに右手を上げる。

大きな背中は

いくつもの荷物を背負っているはずなのに

ユノは一つも その荷物を分けてくれない。





チャンミンが旅行先で倒れたと連絡が入ったのは

まだ暑さの残る夏の終わり。

私はあの日の事を今でも鮮明に覚えている。

ユノの顔つきが強張って

血の気が引くように真っ青になった瞬間

とんでもない事が起ってしまったのだと思った。





それから3日後、

チャンミンは迎えに行ったマネージャーとともに帰ってきた。

何も写していない空っぽの目は赤く腫れて

長い睫毛は涙で濡れていた。

彼は何も語らず

俯いて ただじっと足元を見つめるだけだった。





福岡の空港で忽然と姿を消したAちゃん。

ユノたちの事務所

彼女のご家族

友達や 仕事仲間

沢山の人たちが彼女を探したけれど

彼女は見つからなかった。





チャンミンはフライトの時間を過ぎても

ずっと彼女を探し続けて

空港中走り回って

とうとう 倒れてしまったらしい。





あれから 3か月

まだ私たちは彼女を探している。

チャンミンは徐々に体力を回復しつつあるけれど

心の傷は癒えないまま。

一人にできないと

ユノは、チャンミンを私たちの家に連れ帰ろうとした。

だけど チャンミンはそれを頑なに拒んだ。





「あ、ユノ…スマホ忘れてる」





固く閉ざされた心は

私たちでは 解放できるわけもなくて

ユノは静かに泣いた。





『ヌナ…どうしたの』
「ユノもう着いてる?」
『まだですよ、もうすぐ着くころかな』
「スマホ忘れてるって伝えて」
『うん、わかった』
「チャンミン、…インスタまだやってる?」
『…ううん』
「そっか…今日はピザを焼くからうちに寄ってね」
『うん、ありがとう』





Aちゃんにどんな事情があって

チャンミンの前から消えたのか…

ううん、もう理由なんてどうでもいい。

とにかく帰ってきてほしい。

帰って チャンミンを抱きしめてほしい。





Aちゃん、

チャンミンはね、 あれから笑わなくなってしまった。

Aちゃん、

チャンミンを 助けてください。

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作成日時:2017年5月20日 0時

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