ホール ページ49
音葉 side
「あはははははっ！無様だね血空A！」
「るっせ…げほ、げほっ」
一人の少年がステージ上で笑っている。
隣に、綺麗な女の人。
部屋の中心あたりにA。
Aの周りには、大量の血痕。
「…A…？」
「あれ？君も来たんだね、翠如音葉」
床に膝をついて、肩で息をしているA。
私の後から次々と皆が入ってくる。
「あ、夜野衣玖乃、箱入希！」
「…これでいいんだろ？」
「うん！大満足だよ！」
苦虫を潰したような顔をする流弥君と衣玖乃ちゃん。
それを見て純粋無垢な笑顔を浮かべる男の子。
「…なんで来た」
いつものAと違う、怒気しか含まれていない声。
「なんで、って、不安で…」
「私はそれを望んでねえッ！」
ビリビリと空気が震えた。
Aがこんなに怒るのは初めてで、涙が出そうになった。
「なんでそんなに怒るの？血空A。
仲間が助けに来てくれる。
君が好きな展開じゃないか！」
そう言う男の子を睨むA。
「…せっかく突き離したってのに、なんで来るんだよお前らは」
「全部わかったから」
「は？何もお前に言ってねえはず…」
「この封筒」
封筒を見せると、Aは目を見開いた。
「どっかに落としたと思ったら…」
チッ、と舌打ちをして立ち上がるA。
「…なにしてんだよ、さっさと逃げろよ。
助けなんていらない」
「でも、もうボロボロじゃ」
「こいつの思い描いたストーリーをなぞりたくねえんだよ！」
再びそう怒鳴ったA。
思い描いたストーリー…？
考えを巡らせる間も無く、Aは武器を持って男の子に斬りかかった。
キィン、と澄んだ音がして、Aが押し負けた。
「…はあ、ラスボスがこんなチートなんて聞いてねえよ…」
「あはははははっ！チート…チートかあ！
僕は面白い物語を求めてるだけだよ！」
「あっそーですかッ！」
再び斬りかかるA。
でも、何度やっても女の人にはばかられる。
まるで、次来るのがわかっているように…。
「心読まれてるみたいで気持ち悪いッ！」
「あはっ、僕は君以上に頭いいからね！」
「知らねーよ！勝手に威張ってろ！」
一旦退いて、魔法を唱えた。
「【拡散魔法、ピエロ】」
赤い球体が二人に襲いかかる。
でも、それでも二人は無傷だった。
「本当のチートじゃねえか…」
Aは、ため息をついた。
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作者名：リリムゥ | 作成日時：2018年1月26日 18時
