いいもの ページ19
「…ま、さんきゅ」
「お母さん達、止められなくてごめん。
これは、せめてもの償い。頑張ってね」
「…言われなくても頑張るよ、ねーちゃん」
「最後ぐらい、昔の呼び方で、ね？」
「…ありがと、ゆみ姉」
「うん、バイバイ」
足枷はつけたままでいい、と断って部屋から出る。
ずる、と足を少し引きずりながら歩く。
少し歩くと、広めの部屋に出た。
そこには、時計。
八時、六分。
ふーん、まあいいや。ってか喉乾いた。
あ、いいもの発見。
ガラスの破片。なんでこんなとこにあんだか。
それを右手に持ち、左手の手首に当てて、一気に引く。
パタタッ…と血が滴り、床に落ちる。
流れていく血に舌を這わせ、飲む。
…ん、美味しい。
甘いな、やっぱ。
こう思うのは、何かおかしいだろうか。
まあいいや。さっさと行こう。
ってか髪長くなってるな。なんでや。
肩あたりだったのがお腹あたりまである。
ズルズル…と再び足を引きずる。
足枷についた鉄球が結構重い。
3キロぐらいあんじゃね。
「〜〜〜〜！」
「〜〜」
…話し声、か。
明るくなってきた。
部屋…でっけーな。
「な、なんでここに！？」
「…ゆみ姉が出してくれた。
母さん達止められなくてごめんって言ってた」
へらり、と笑う。
今の私の目は、暗くて、死んでいるんだろう。
「…そう、なら来た奴らを殺しなさい」
「…なんで？知らない人なのに、いいの？」
「お母さんの言うことが聞けないの？」
「…わかった」
魔術…いや、魔法でナイフを出す。
左の手首には、まだ血が滴っている。
血をぺろ、と舐めて喉を潤す。
「ごめんね」
そう言って、私はナイフで刺した。
「ごぼっ…なんで…」
母さんに。
「…ごめんね〜、独りで脱出するって決めたからさ。
だから、敵である貴方達は邪魔なんだよね」
あー、やっぱ邪魔だな。
鉄球と足枷を繋いでいる鎖をナイフで断ち切る。
「早くゲームしたいし、まずご飯食べてないからお腹減った。
ってなわけで、さっさと行動不能になってね」
ナイフをくるくる、と手で回し、逆手に持つ。
「させるかッ！」
「あは、そう来るかなって思ったからさ。
痛いかもね？」
向かってきた音葉のお母さんのお腹に刺す。
次は、音葉のお父さん。
…つまんない、何も抵抗せずに刺されるなんてさ。
…じゃ、さっさと出よっかな。
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作者名：リリムゥ | 作成日時：2018年1月26日 18時
