逆転 ページ15
「…お前は、いっつもそうだ」
震える声で、けれど、自分でも驚くほどの低い声で。
基本的に僕の声は低いのだけれど、それよりももっと。
地獄から這いずり出てきた死者のような声で。
「…僕から友達も、努力した証も、信頼も。
全部全部、取り上げた。
代わりに増えたのは生傷。
…なあ、屋良鈴奈」
中学の時、元々仲のいい人がいなかった私をターゲットにして、いじめた。
恥ずかしい姿を撮られたり、殴ったり蹴ったり。
カッターで首を切られたりした。
先生は、総理大臣の娘を怒らせるわけにはいかないといって、屋良鈴奈の言いなりになった。
テストで全てあってるはずなのに０点にされたり。
通知表が全て１だったり。
だが、それも中二の秋で終わった。
あいつが転校したからだ。
「…お前は、“総理大臣の娘”という立場で偉くなっているだけだ。
おそらく、椿もそれが分かってて近付いたんだろ。
まあ、それが本当かどうかはどうでもよくて」
そっと、パーカーのポケットからスマホを取り出す。
「…この、君のお父さんが裏でやっている汚いこと。
裏金だとか…なにこれ、不倫かな。
綺麗な女の人だね。裸だけど。
そういった写真がごろっごろこの中に入ってるわけだ」
「まさか…ッ、やめろッ！！」
「…これを流されたくなかったら大人しくそこから退いてくれるかな？
そしたら、もう消すからさ。君の眼の前で」
…よし、退いてくれた。
「あ、私最後に出るから」
「はーいっ！流石A！」
「はは、すげーだろ」
皆出て、最後に音葉と私だけが残った。
「…じゃ、これ消すよー…はい」
「…よかった…」
「あ、言い忘れてた」
「どうしたの、A」
じゃあ、最後に種明かし。
「この写真消したけど、とっくのとうにマスコミに送ってあるから。じゃね」
よっしゃ走れ。逃げろ。
「…くっ、あはははっ、面白いなあ！」
「…嘘か？」
「…ああ、ごめん、君は嘘が嫌いだったね。
違うよ、嘘なんかじゃない」
「Aが言ったのは全部本当！
ただ、もうマスコミに流してるっていうことを言わなかっただけ！」
「うっわ、てか足速いな。
私鈍足だからなー…飛ぶか」
「私は！？」
「持ってやる」
背中に音葉を背負って廊下を飛ぶ。
あー、でも相手も天使だからな。飛んできやがった。
「音葉、ネットニュース読み上げて」
「はーいっ！」
えーっとね…と前置きをして、ネットニュースを読み上げ始めた。
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作者名：リリムゥ | 作成日時：2018年1月26日 18時
