22 ページ24
.
ごめんなさい、雄登。
何度そう思ったって今更遅いのはわかっているし、彼に両膝を上げられて本当に寸前なのに。
『やっぱり、やめよう』
怖くなった。
私に悪いことをするほど余裕はない。
「…どうして？」
『きっと後悔する』
そう口にした瞬間に罪悪感が大きくなって、視界が歪んだ。
涙が止まらなくなった。
だいたいこういう場合に泣くということは、自分の愚かさを認めたときだ。
正義なら、泣く理由が存在しない。
誰に許してほしいのかはわからないけれど、
どうか許してほしい。
『作間くん、ごめんね』
そんな都合の良い考えが頭をよぎった。
『本当に、本当に、ごめんなさい』
わかっている。
目の前にいるこの人と素肌を重ねて虚構の幸せに逃げたことを、きっと世界は許してくれない。
「酷いですね」
彼は苦しそうな顔をした。
接触部に圧力を感じて、事は続けられるのだと悟った。
チクチクというか、キリキリというか、よくわからない痛みを感じる場所がだんだん奥に伝染する。
痛いと言うことは憚られた。
両手でシーツを掴んで目を瞑り歯を食い縛り、じっと耐えると、嫌な汗が全身から出ているように感じる。
動きが突然止まったので目を開けてみると、彼の目線は私の瞳を掴み、離さない。
「…もし那須先輩がいなかったら」
『雄登が…？』
「もしあいつがいなかったら、A先輩は、迷いなく受け止めてくれたんですか？」
.
私の頬にたった一滴だけの雫が落ちた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Atena(プロフ) - 主人公の心の揺れが最後まで見られて面白かったです！ (2020年4月25日 0時) (
レス) id: dbbbb4e0c8 (このIDを非表示/違反報告)
清良(プロフ) - お疲れさまでした！最後まで那須くんかっこよかったです！ (2018年12月14日 1時) (レス) id: 7cb81e8898 (このIDを非表示/違反報告)
えるにめ - 凄く面白いです。さっくんと那須くんメインなとこも凄く嬉しいです！ (2018年11月19日 17時) (レス) id: fa89af2adc (このIDを非表示/違反報告)
ねり - すごくおもしろいです！！ (2018年11月17日 15時) (レス) id: b337ad9043 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：プチラメ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/Petit_lame
作成日時：2018年10月25日 19時
