好きじゃないよ、絶対 (ページ16)

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「西野、」

その時現れたのは息を切らした檜山くんだった。

［西野、ちゃん、だいじょぶ？］

その後ろにはスマホを片手に握った川谷ちゃんが息を切らしていた。
2人とも急いで来てくれたんだ。
川谷ちゃんなんて走るのが大嫌いなのに、ここまで走ってきてくれたんだ。

「嫌がってる、やめろ。」

低い声で私から彼を引き離す檜山くん。
ちらっと私を見た目はすごく冷たかった。

［西野ちゃん大丈夫？私だけだったら無理だなって思って男の子連れてきたの。］
『ありがとう、大丈夫だよ。』

心配させまいと笑顔で返すと川谷ちゃんは大声で泣き始めた。
なんでだよ、と妙に冷静だった私は心の中でツッコミを入れた。
川谷ちゃんが落ち着いてから辺りを見るともう檜山くんと彼はいなかった。

［檜山くん、ちょっと怖かったね。］

そう言った川谷ちゃんに返事はできなかった。
川谷ちゃんはなぜかたくさん泣いたからか目が真っ赤に充血していて鼻水も垂れていた。
ポケットティッシュを差し出そうとしたが、残念ながらポケットティッシュが入ったブレザーは教室に置いたままだった。

川谷ちゃんが檜山くんにどのような説明をして一緒に来てくれたのかなんて聞けなくて少し心がモヤモヤする。
私の名前を出してもなお、彼の優しさで教室から離れたこの校舎まで助けに来てくれたのか。
はたまた気を利かせた川谷ちゃんが私の名前を出さずに人が困っていると言って連れてきてくれたのか。
前者にしろ後者にしろ彼も彼女も優しい人間だと思う。