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ミラージュには目もくれず、ウェンティはこそっと蛍に耳打ちした。
「それに、ここの守衛たちは夜になると帰っちゃうらしいよ。
タイミングをちゃんと狙えば、ミスをしたくてもできないと思うんだ…」
「ミスを前提に考えるな！」
パイモンのキレのいいツッコミが入る。
しかし、それをウェンティは無視し、蛍に真剣に語りかけた。
「蛍はどう思う？」
「さっき、自分がバルバトスだと言った。」
蛍は至って冷静に返す。
「ふむ……
確かにそう言った気が…だから？」
「神なら、見て見ぬふりはできない。」
空の言う通りである。
神が、自分のライアーを盗むことを許可するわけが＿＿＿
「私は、トワリンを助けたい。」
……なるほど、そっちか。
「もう、別れは見たくない。」
どうやら、蛍にも相当悲しい過去があったのだ、とミラージュは悟った。
「必ず天空を持って帰る。」
そこまで言ってから蛍は、これから行う行動を思い返し、ゴクリと唾をのんだ。
ウェンティはうん、と力強くうなずき、蛍の背中を押した。
「恥ずかしがらないで。さあ、行って。」
蛍は、気を引き締めて大聖堂に入って行った。
＊
「へえ、まさかこんなに真面目になってるとはね。性格変わった？」
冷たい空気が鼻を掠る。
ウェンティは隣で塀に寄りかかって空を眺めるミラージュに問いかけた。
「それぐらいせんと、すぐにバレるだろうが。現世にも吾に関する書類が大量に残されてあるんじゃからのう。」
「…戻る気はないの？」
「ふっ、今戻っても何の意味もない。」
ミラージュは目を細めた。
黄色い月が、彼女の赤い瞳に映った。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
すみません、昨日更新できませんでした……
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作者名：おいしいじゃがいも | 作成日時：2023年4月5日 20時
