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「大聖堂の地下にある。」
ふぅ、と息を吐くようにそう話すミラージュ。
「へぇ、大聖堂に地下なんてあったんだ。」
「この目で見たからね。あとで教えてあげるよ。」
それに、とミラージュは付け足す。
「大聖堂の地下は、話によれば数多くの西風騎士を雇っていると聞いた。常にうろちょろそいているらしい。それほどに安全な場所にあるってことだよ。」
横目でちらっとウェンティを確認する。
ウェンティは『安心して任せて』とでもいうかのようにバチンとウインクをした。
「ミラージュは、強引な手段を使いたくないんだよね?」
「もちろん。」
「じゃあ、一度交渉で手に入れられないか試してみよう。ついてきて。」
*
ウェンティの背中を追っていき、大聖堂の扉を開ける。
そして、ミラージュから教えてもらった。
「あそこ。階段の中心の下に見える? あれが地下室への入り口。」
パイモンは、前に進もうとするミラージュに声をかけた。
「おい、ミラージュはなんでこんなに大聖堂に詳しいんだ?」
ミラージュは少し驚いた表情でパイモンを振り返った。
それから、苦笑した。
「記憶喪失の時、ここに入院してたからね。」
「そうか……」
パイモンはミラージュの過去を想像してしまい、胸がギュッと締め付けられたような感覚に陥った。
しかし、次のウェンティの呑気な挨拶で、それも消えうせたのである。
その気持ちは、これからの計画についてのドキドキで埋まった。
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作者名:おいしいじゃがいも | 作成日時:2023年4月5日 20時