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学校からの帰り道、一緒に歩く誰かがいる。
こんなの初めてだ。
これだけのことが、こんなに幸せなんだと感じた今日。
誰かが一緒にいて、話をして、笑って、
これだけで、景色がこんなにも明るくなるなんて……。
気付けばいつもの曲がり道の所。
この道は暗くて、ずっと通るのが嫌だった。
でも、曲がらないと時間が遅くなる。時間が遅くなると結局暗くなる。
どうせ暗くなるのなら、早く帰れたほうがいい、なんて小学生の頃に気付いて、浮かない気分で通ったこの道。
乃「Aちゃんここどっち?」
『あ、私はそっちのほう』
と指差す曲がり道。
北「あ、俺と一緒だ」
乃「私ここ真っ直ぐだから、あとは北人がAちゃん送ってあげて。そっちの道暗くて危ないから」
北「ああ」
乃「じゃあね」
『うん、じゃあね』
北「また明日」
また会う約束をできる幸せ。
周りの人たちにとっては、何気ない日常なのかも知れないけど、私にとっては大きな幸せだった。
2人きりの道。
吉野くんと2人きりになったのは久しぶり。
憶えてるかな……。
北「あのときはありがとう」
『えっ…?』
憶えてた…?
北「ほら、紙袋のこと」
『憶えてたんだ…』
北「そりゃ、助かったし、……俺だからとかそんな理由じゃなくて、困ってる人がいたら助ける、っていう子なんだって思って、なんか嬉しかったから」
『なんか…ありがとう』
北「いやいや俺のほうこそ」
ありがとうって、こんなに暖かい言葉……。
今日は、初めての気持ちばかり。
北「てか、ビックリした」
『え?』
北「乃々華が友達できたって呼びに来て、それで行ったらAちゃんで」
『えっ…、名前……』
北「あ、ごめん、嫌だった?」
『いや、そういうわけじゃなくて、』
北「でも乃々華だけAちゃんのこと名前呼びしてるとかズルいじゃん」
…ズルい。
天然人たらしなのか?
北「Aちゃんも、俺のこと名前で呼んでくれていいから」
『じゃあ、…北人くん』
北「うわっ、なんか嬉しい」
『え、なんでよ』
北「ふふっ」
『え、何何、気になる』
私、人と話すの苦手だと思って避けてたたけど、こんな楽しいこと逃してたんだ…。
『ここなんだよね、家』
楽しい時間はあっという間。
北「そっか。じゃあまた明日」
『うん、じゃあね』
北「そうだ。8時」
『え?』
北「朝も一緒に行こ。途中で乃々華と合流だけど」
『うん…!』
嬉しい…。
あの道も、今日は明るく見えた。
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作者名:北極星ポラリス | 作成日時:2023年2月5日 13時