３０（Yuri Side） ページ31
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【あのとき】回想…
昨日から、ちょっと風邪気味みたいで、
気管支のところにシールを張ってて、
持久走大会の練習も休んでる。
ほこりが舞うからマスクもしてて、
完全防備。
僕が練習を終えて、
Aを見るとマスクから少し出てるほっぺも
耳も、赤くなっててこれは熱あるんじゃない…？
『A、顔赤いよ。熱あるんじゃない？』
「え、体は元気だよ？」
『あんまり無理しないでよ。
あとでつらくなるのは、Aなんだから。』
「わかってるよー。」
こっちは心配してるのに、全く気にしてない。
そういうところもAらしい。
“見せない”ところが。
５時間目が終わって、帰りの会も終わって、
下校時刻になった。
いつもの僕を呼ぶ大きい声、
僕の大好きな声はまだ届かない。
周りのみんながほとんど帰っちゃったから、
今日は僕が迎えに行ってあげようかな。
そう思って教室に行ったけど、
Aの姿は見当たらない。
ランドセルはあるのに。
おっちょこちょいなところはあるけど、
基本しっかりしてる子だから、
宿題やってこなくて先生に呼ばれたとかはないはず。
なんかあったのかな。
あ、風邪…
保健室行ったのかな？
やっぱり熱だしたんじゃん、って
ちょっとからかってやろうかな、
なんて思って保健室に行ったけど、
ここにもAはいない。
職員室とか掃除場所とか探したけどいなかった。
すれ違っちゃったかもと思って教室に戻ろうと、
階段を上っていると、窓から
数人の女の子と一緒にいるAを見つけた。
なんだ、友達と一緒にいたんだ。
風邪気味なのが心配だったし、
探したんだからね、ってどうしても言いたくて、
待つことにした。
自分のランドセルを持って、
踊り場の窓から様子を見ると、
もう女の子たちはいなかった。
そろそろ来るかなって思ってたのに、来ない。
やっと、なんか変だなって気づいて、
昇降口から駆け出したら、
先生におんぶされて、ぐたっとしたAがいた。
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作者名：しんくれろ | 作成日時：2018年8月21日 22時
