夜桜 ページ3
東京都千代田区–日比谷公園
木には桜の花が月の光を受け、白く美しく、
それでいてどこか哀愁を漂わせながらその顔をのぞかせていた。
その木の下を一人の女が足早に通り過ぎでいた。
公園にある街灯では、うっすらとしか見えないが、
真新しいとは言えないが気立ての良さそうなスーツを着ている。
また、足には歩きやすそうだが、繊細なコサージュがついた淡いパンプスが見える。
スカートではなくパンツスーツを着こなしているところは、彼女をよく知る人が見たら、なんともこの女らしいと考えるだろう。
時折、右手を覗き込むようなしぐさも見せながら
女−降谷 Aは考える。
(……眠い ガチで眠い もう三徹目なんですけどォォ
ォォォォ!!!)
現在、時刻は3:00である。
もはや、おはようの挨拶をするべきこの時刻に
降谷は帰宅していた。
ご存知の通り、終電などとっくに過ぎており、
電車たちですら、皆車庫に戻って始発に備えている。
この女、見たところ勤め人である。
OLだろうか、
だとしたら飲み会帰りなのか、それともかなりひどいブラックな企業で残業でもさせられていたのか。
彼女の心の声を聞かなかった者は、
そう考えるかもしれない。
この推理は半分は当たっているだろう。
確かに、降谷は残業していた。
3日連続で、
ほとんどサービスということにされているが。
しかし、彼女が勤めているのは一般企業ではない。
官公庁のビルが軒を連ねる霞ヶ関、降谷の職場はそこにあった。
日本警察組織の全てを総括しているといっても過言ではない組織ー警察庁。
警察学校を首席で卒業し、警察庁にもっともストレートで入庁を果たした女、それが降谷 Aなのである。
この一週間、日本では海外の首相を招いての
国際会議があった。
降谷が所属する警備局警備企画課は、国際会議期間中にいわゆる粗相が起こらないように様々な安全対策を取らなくてはならず、てんてこ舞いであった。
そして、今日やっと事後報告と最終報告書の作成を終えたのであった。
(家が警察庁から徒歩で帰れる範囲だから
まだいいんだけどね。)
降谷は心の中でぼやいていた。
なんだかんだ言いながらも、彼女がいう家に着いたようである。
32階建の高層マンション、そこの28階の角に彼女の部屋がある。
「ただぃまぁ〜」疲れからか、若干声が裏返ったのは、気のせいではないのだろう。
3LDKの広い家に、同居人は見当たらない。
彼女一人で住んでいるらしい。
4人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
chiaki0105(プロフ) - 皆さん、是非是非 感想やもっとこうしてほしい等のご意見をお寄せください! こちらとしましても、励みになりますし、なによりも勉強になります。 よろしくお願いします! (2019年10月3日 15時) (レス) id: bcfecc2411 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Regulus | 作成日時:2019年9月30日 23時