レベル60 ページ12
私たちが船に帰ってきた後、仲間の皆は何があったのかを聞くこともなく、ただお帰りと言ってくれた。その温かさに、緩くなっている涙腺から涙が出そうになって、でも泣き顔を見られたくないから、側にいるベポに思いっきり抱き着いた。
「ベポ好き、大好き」
「え、お、おれも好きだよ！でも急にどうしたの！？」
狼狽えながらも私を抱き締め返してくれるベポ。シャチにもペンギンにも、イッカクにもウニにも抱き着けば皆それぞれ何かしら反応してくれる。こんなに優しい皆とも離れるかもしれないんだ。
「何だ何だ、今日のAは甘えただな〜」
「なあなあ、キャプテンには言わねーの？」
コソコソと話すシャチが指差す向こうには医学書を片手に座っている船長がいた。勿論、船長の事は好きだ。だから皆に言ったのと同じように、言えるうちに好きだと言いたいのに。
「ぁ、っ······？」
どうしてか、「好き」の二文字が声にならなかった。
皆に言う時には感じなかった感情が芽生える。前は言えたのに、今はそんな軽率に言葉に出来ない。したくない。その言葉を口にするのが恥ずかしい。
体が少し熱い。脈も速くなった。鼓動が五月蝿い。
物知りな船長なら知っているかもしれない。この感情は何ですか。
貴方がひどく眩しく見えるようになったのは、どうしてですか。
「どうしたの、A？」
イッカクに声を掛けられても、お腹に埋めた顔を上げることはしなかった。
＿＿＿＿＿本当は分かってる。きっとこれが巷でいう「恋」というもので、その対象が船長だということも。でも、自覚したくなかった。
別れの覚悟を決めたいのに、この感情はただの障害物にしかなりえない。
今気付いた自分が恨めしい。きっと私はずっと前から船長にそういう感情を抱いていた。
それが分からなかったのは、私があまりにも幼かったから。
「おーい、A？」
「＿＿＿＿ちょっと眠たい。から、昼寝してくるね」
顔を見せないようにしてリビングから出ていく。走って自分の部屋に駆け込む途中、涙が溢れてきて驚いた。私の自由の為に覚悟を決めなきゃいけないのに。言う勇気も無ければ、想いを捨て去る勇気も持てない。
ドアを閉めて、ズルズルと背を預けて座り込む。感情がぐちゃぐちゃだ。
整理しない限り、この涙はきっと止まらない。
(今更、どうしたらいいの······)
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水飴(プロフ) - 琴葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！とても励みになります···！ゆっくりと更新していきますので、気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (7月31日 10時) (
レス) id: bc02f2c7ae (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - この作品を何度読み返しても､心の動きに惹かれ検索をかけても無意識に辿り着く作品です。ONEPIECEを最近知り､パンクハザード編を見終えた新参者ですが、更新これからも楽しみに待っています。どうかご自身のこと優先でお体に気をつけてお過ごし下さい…！ (6月25日 8時) (レス) @page16 id: 2a7eef1005 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - もちふわさん» コメント有難うございます！ご指摘有難うございます、直ちに直させて頂きます！ (2022年11月13日 14時) (レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
もちふわ - 指摘です。前作のprofileのところの容姿のところにタトゥーや刺青って書かれてるけど、タトゥーと刺青は同じ意味ですよ。 (2022年11月13日 13時) (レス) id: 33de98826c (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょ＠テスト終了まで低浮上さん» さくちゃぁぁんありがとう〜！！私も予期してなかったけど続編行っちゃった！完結まで突っ走れるように頑張るねぇぇ！！！ (2022年10月9日 10時) (レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/mxa_1031
作成日時：2022年10月8日 21時
