レベル50-past edition- ページ2
コロン、と部屋に何かが入ってきた。鉄格子の窓から何かが投げられたのだ。
Aは重い体を起こしてそれを手に取った。手頃なサイズのプラスドライバーだった。窓の外を見やると、うっすらと立つ誰か。その足元に影はなく、一目で霊だと分かった。
母親の遺伝を強く受け継いだのか、Aも生まれてからそういった類いの存在を認知していた。しかしそれを自分では特異だと思っていないので、特別驚くような事も無かった。
顔も見えない霊は、一目Aを確認するとスッと消えていった。Aはドライバーの使い方を知らないので、こんなものを渡されても困る、と内心思っていた。しかしふと窓枠を見てみると、ドライバーが嵌まりそうなネジがあるではないか。
震える手で時間をかけてネジを抜くと、あんなに頑丈な鉄格子がいとも簡単に外れた。音を立てないようにそっと窓部に乗り上げて、Aは八年ぶりに外に出たのだった。
＊
＊
それからAは所々破れたワンピースだけを身に纏い、裸足のまま極寒の外でさ迷っていた。既に足の感覚はない。目の前ももうはっきりと見えないが、誰もが寝静まる夜中に脱出したので、何がなんでも日が昇る前にあの店から距離を取らなければいけなかった。
(外に出られた······もう、いいかな)
Aはあの店にいる時、自分が死ぬ時の事を考えていた。感情も未来も捨ててしまった彼女がこれだけは、と願ったのは"外の世界に出て死ぬ"事だった。せめて死ぬ時は、冷たい部屋の天井ではなく、視界いっぱいに広がる空を目に映してこの世を去りたいと考えていた。
そうすれば、自由が手に入ったみたいで自分は満足して死ねるだろうから。
(雪が温かいなんて、不思議だな······)
足元からじんわりと伝う熱を求めて＿＿＿＿体力の限界で倒れてしまいそうになったAを、誰かの腕が支える。いつまでたっても雪に体を埋めることができずに不思議に思ったAは、もうほとんど動かない体を無理矢理動かして、己の体を支える腕の持ち主を見やる。
「おい、こんな所で倒れるな。死にてェのか」
冷酷な視線、冷たいのにどこか感情のある声、整った容姿。
Aが後に船長と呼び慕うトラファルガー·ローとの出会いだった。
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水飴(プロフ) - 琴葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！とても励みになります···！ゆっくりと更新していきますので、気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (7月31日 10時) (
レス) id: bc02f2c7ae (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - この作品を何度読み返しても､心の動きに惹かれ検索をかけても無意識に辿り着く作品です。ONEPIECEを最近知り､パンクハザード編を見終えた新参者ですが、更新これからも楽しみに待っています。どうかご自身のこと優先でお体に気をつけてお過ごし下さい…！ (6月25日 8時) (レス) @page16 id: 2a7eef1005 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - もちふわさん» コメント有難うございます！ご指摘有難うございます、直ちに直させて頂きます！ (2022年11月13日 14時) (レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
もちふわ - 指摘です。前作のprofileのところの容姿のところにタトゥーや刺青って書かれてるけど、タトゥーと刺青は同じ意味ですよ。 (2022年11月13日 13時) (レス) id: 33de98826c (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょ＠テスト終了まで低浮上さん» さくちゃぁぁんありがとう〜！！私も予期してなかったけど続編行っちゃった！完結まで突っ走れるように頑張るねぇぇ！！！ (2022年10月9日 10時) (レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/mxa_1031
作成日時：2022年10月8日 21時
