レベル53-past edition- ページ5
「飯は食ってたのか」
「はい。パンや客が残した物を」
「チッ······ろくなもん食ってねェじゃねェか」
Aの体重は平均以下、命に関わるほどでは無いが、少し力を込めれば簡単に骨が折れてしまいそうな程に細い。多少肌も荒れて髪も傷んでいるが、本来の可愛らしい顔立ちを損なう程では無かった。
ローはそんなAに自分の好物であるおにぎりを食べさせた。料理が苦手なローでも唯一作れる代物で、ほんの少し歪なそれが彼の努力を垣間見せる。
「食え。そんな物でも腹の足しにはなる」
「······っ」
本当に食べても良いのか、こんなに綺麗な食べ物を食べる資格なんて無いのに。
そう言いたげにAの顔が僅かに不安げに変わった。ほんの少しずつ、感情を取り戻して行くように。
「い、いただきます」
恐る恐る口にしたおにぎりを、ゆっくりとだが何度も咀嚼して食べる。嫌でも偏食の生活をしていれば体が受け付けなくなる。Aも何とか一つは食べきったものの、それ以上は食べられなかった。
ただ、今まで食べたどのご飯よりも温かくて、味がしたとAは感じていた。これが「美味しい」という事だと、何となくだが理解したのだった。
思えば、目の前の彼がする事は全てAが知らないものだった。ご飯が温かくて美味しい物だと教えてくれたのも、体に触れる手の優しさも、荒いが気遣うような言葉も。未知の物に沢山触れたのに、それがずっとどこかで望んでいたようなものの様な気がして、Aの胸が痛み始める。
「どうして、私にこんな事をするんですか」
「＿＿＿＿＿＿！」
「胸が、痛いです······っ。痛くて仕方無いのに、嫌だと思えないのは、辛いと思えないのは、どうしてですか······どうしたら痛みはなくなるのですか」
長年閉じ込めていた感情が動いた瞬間だった。複雑な感情が絡み合ったAは、気持ちの整理がつかずにただ涙を溢した。自分でも何が起こっているのか分からなかった。
今までは押し殺していれば何にも煩わされなかったのに、この感情に関しては押し殺し方が分からず、素直に受け入れる勇気も欠如していた。
「痛みごと受け入れろ。目を背けるな。その感情はおまえが一番望んでたものの筈だ」
凍っていた心に温かいものが降り積もる。
Aが何よりも求め、何よりも拒絶した"幸せ"だった。
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水飴(プロフ) - 琴葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！とても励みになります···！ゆっくりと更新していきますので、気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (7月31日 10時) (
レス) id: bc02f2c7ae (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - この作品を何度読み返しても､心の動きに惹かれ検索をかけても無意識に辿り着く作品です。ONEPIECEを最近知り､パンクハザード編を見終えた新参者ですが、更新これからも楽しみに待っています。どうかご自身のこと優先でお体に気をつけてお過ごし下さい…！ (6月25日 8時) (レス) @page16 id: 2a7eef1005 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - もちふわさん» コメント有難うございます！ご指摘有難うございます、直ちに直させて頂きます！ (2022年11月13日 14時) (レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
もちふわ - 指摘です。前作のprofileのところの容姿のところにタトゥーや刺青って書かれてるけど、タトゥーと刺青は同じ意味ですよ。 (2022年11月13日 13時) (レス) id: 33de98826c (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょ＠テスト終了まで低浮上さん» さくちゃぁぁんありがとう〜！！私も予期してなかったけど続編行っちゃった！完結まで突っ走れるように頑張るねぇぇ！！！ (2022年10月9日 10時) (レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/mxa_1031
作成日時：2022年10月8日 21時
