レベル４ ページ6
静かな夜の海の上、水面に映る月がゆらゆらと揺れているのを見ながら、私は夜番をしていた。
小さなランプと月明かりだけなので、どうにも見張りをするには不便だと毎回思う。
静かすぎて船内から誰かのいびきが微かに聞こえてくるほどだ。気持ち良さそうに寝ているんだろうな、と少し羨望と恨めしい気持ちを抱えつつ、誰かの存在が近くに感じられることを嬉しく感じていた。
「寒っ······」
真っ暗で寒い、誰もいない空間は幼い私が育った環境と酷似している。
あの時、勇気を出して船長の手を掴んでいなかったら、私はきっとあの冷たい場所で息絶えていただろう。
人の温もりを知らぬまま、優しさに触れぬまま。
人間が持つべき感情を欠陥させた＿＿＿＿＿そう、まるでロボットのような生き方を。
(こんなに静かだと、どうも干渉に浸ってしまうな)
誰か、隣に居てくれたら良いのに。
寂しさを感じてそんなことを考えてしまう私は、どうやらすっかりと
夜風に吹かれ、腕を擦りながら、眠気と寒さを吹き飛ばすために甲板の方へと歩いていった。
(······？)
甲板の先に何かの気配がする。暗くてよく見えないけれど、船員だろうか。
歩みを進める毎にその人影は大きくなっていき、私の予想は全く外れていたと知ることになる。
約3m程の身長で、黒い羽がびっしりと織り込まれたようなコートを着ている。
ただ、影が無かった。月明かりに照らされているのに、甲板の床板にその男性の影が写っていない。
(この人、幽霊だ)
幽霊だなんてそこら辺にうじゃうじゃといるが、こんなにはっきりと形を持った幽霊はそうそうお目にかからない。そもそも、何故この船に乗っているんだろうか。
産まれてからずっと視える体質なので特別驚きはしないが、どんな顔をしているのか気になった私は、ずっと海を見やる男性の隣に立って彼の顔を横目で盗み見た。
道化師のようなメイクをしている彼は一言で言うと“変人”に見えた。
シャツもハート柄だし、幽霊なのに煙草吸ってるし。ただ、顔は整っている気がする。
(······何か、濃いなこの人)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 782人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水飴(プロフ) - なつみさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！作者の私情の関係にもよりますが、いずれはどちらも書かたら良いなと思っておりますので、お楽しみにして頂けたらと思います！ (2022年9月16日 0時) (
レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - どっちもみたいです!!!! (2022年9月15日 20時) (レス) @page25 id: dfa30137f5 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょさん» コメントありがとうございます！頑張ってどちらも書けたら良いなと思っています😌 (2022年9月12日 21時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - エース、コラさん・・。どちらも気になりますね・・！ (2022年9月12日 21時) (レス) @page25 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - グエグエさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！私のやる気があればいずれどちらも書くと思いますのでお楽しみに...！ゆっくりと更新頑張ります！ (2022年9月12日 11時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水飴 | 作成日時：2022年8月20日 16時
