レベル17 ページ19
こんな話をするつもりは無かった。
けれど唯一私の過去を知っている人だから、つい話してしまったのかもしれない。気まずくなるのは目に見えていたのに、吐き出してしまいたかった。同情が欲しいわけではなく、ただただ聞いて欲しかった。
こんなことを考える私は異常なのかどうか、知りたかった。
背後にいる船長は何も言わない。いたたまれなくなって部屋から出ようとすると、船長の手が私の手を取った。ゴツゴツとして大きな手は少し冷たいけれど、触れ方はいつもよりずっと優しい。
振り返ろうとした瞬間、船長の気配が一層身近に感じた。気付けばまたベッドに逆戻り。さっきと違うのは、船長の腕の中にいること。頭を押し付けられ、肩に顔を埋める形で抱き締められているので船長の表情が見えない。
「······お前の両親がどう思っていたかなんて知ったこっちゃねェが、少なくともこの船の奴らはお前の存在を喜んでいる。シャチやペンギンがその最たる例だ」
低くて優しい声が鼓膜を緩やかに刺激する。心地好い心音と共にそれに耳を傾けていると、お前は充分愛されている、だなんて船長の口から出てきたものだからつい驚いてしまった。
それと同時に、胸の蟠りが解れて視界がじわりと歪み始めた。
「生きる意味は自分で見出だせ。もう他人に縛られようとするな。お前は自由だ」
諭すように言いながら頭を撫でないで欲しい。涙が止まらなくて船長の肩を濡らしてしまう。
急に泣き始めた私にぎょっとしたものの、船長は私を引き離す事もせずに受け入れてくれた。
ふと気になって船長に聞いてみた。
船長は私がこの世に産まれて来たことを喜んでくれますか、と。
すると船長は少し人を小馬鹿にするような、それでいてどこか温かい笑みを作って、不器用で飾らない返事をくれた。
「喜んでなきゃお前を船に乗せてねェよ」
なかなか聞けない船長の本音に心臓が跳ねるような感覚がした。堪らなく船長に抱き着きたくなるこの感情は何に当てはまるのだろう。もう胸がいっぱいいっぱいなのだが、決して嫌ではない。
もう寝ろ、と私を部屋から出そうとする船長にダメ元で抱き着こうとすると、案の定止められた。
興奮が冷めやらないのにどうして寝れるだろうか。
「好きです、船長！」
せめてもの思いで口にした言葉は、船長も予想していなかったらしく豆鉄砲を喰らったように目を見開いていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 782人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水飴(プロフ) - なつみさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！作者の私情の関係にもよりますが、いずれはどちらも書かたら良いなと思っておりますので、お楽しみにして頂けたらと思います！ (2022年9月16日 0時) (
レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - どっちもみたいです!!!! (2022年9月15日 20時) (レス) @page25 id: dfa30137f5 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょさん» コメントありがとうございます！頑張ってどちらも書けたら良いなと思っています😌 (2022年9月12日 21時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - エース、コラさん・・。どちらも気になりますね・・！ (2022年9月12日 21時) (レス) @page25 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - グエグエさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！私のやる気があればいずれどちらも書くと思いますのでお楽しみに...！ゆっくりと更新頑張ります！ (2022年9月12日 11時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水飴 | 作成日時：2022年8月20日 16時
