レベル16 ページ18
ロー視点
この時間帯にAが来るのは珍しく、つなぎを着ていない姿を見るのも初めて会った時以来だった為、一瞬反応が遅れた。
近くに来るよう呼べば、ベッドの片隅に腰を掛けるA。
素直に従って、疑う気も無さそうな目で俺を見る。信頼されていると言われればそうなのだろうが、あまりにも無防備だ。
「何だ、人肌が恋しくでもなったのか？」
冗談で言ったつもりだったが、Aはそうかもしれません、と煮え切らない返事をした。
その言葉に人間らしさを感じて安堵すると同時に、胸に針を刺されたような感覚がした。
「幼少期を振り返って、少ししんどくなりました」
いつもとはうって変わって、小さくて自信無さげな声でそう呟いた。おれに顔を背けたまま、どうして自分は産まれてきたのか、すぐに捨てる自分をこの世に産んで何がしたかったのかと聞いてきた。
Aは産まれてすぐ親に捨てられたという。
捨てられた理由が育児放棄か、はたまたやむ終えない事情で手放されなければいけなかったのか。
真相は分からないが、Aが感情を捨てるまでに過酷な環境で育たなければならなくなった原因の一つには当てはまるかもしれない。
「せめて両親には産まれてきたことを喜んでほしかった、と言ったら我儘になりますか」
おれに聞いた所で答えは出ないと分かっているのに、聞かざるを得なかったのだろう。
すぐにAは、今の話は忘れてください、と取り繕ったような明るい声で言った。
おれの方を振り返ったAの短パンから覗く脚には、消えない刺傷の跡が残っている。
カーディガンを羽織っていて見えないが、腕にも背中にも未だ傷跡はあるはずだ。
早々に手当てをしていればこんな傷は残らないが、当たり前のように手当てなどして貰えず、己の自然治癒力だけが頼りの生活を送っていれば嫌でも残ってしまう。
この傷跡は、Aにとっては苦い思い出を振り返るきっかけにしかならない。
「付き合わせてしまってごめんなさい」
もう戻りますね、と腰を上げたAの手を反射的に取ってしまった。
取らなければいけない気がした。じゃないとこいつは。
きっと独りで泣いちまう。
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水飴(プロフ) - なつみさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！作者の私情の関係にもよりますが、いずれはどちらも書かたら良いなと思っておりますので、お楽しみにして頂けたらと思います！ (2022年9月16日 0時) (
レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - どっちもみたいです!!!! (2022年9月15日 20時) (レス) @page25 id: dfa30137f5 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょさん» コメントありがとうございます！頑張ってどちらも書けたら良いなと思っています😌 (2022年9月12日 21時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - エース、コラさん・・。どちらも気になりますね・・！ (2022年9月12日 21時) (レス) @page25 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - グエグエさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！私のやる気があればいずれどちらも書くと思いますのでお楽しみに...！ゆっくりと更新頑張ります！ (2022年9月12日 11時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作成日時：2022年8月20日 16時
