レベル48-past edition- ページ49
それから過ごした八年間、Aにとって苦痛な生活だったが、人の慣れは怖いもので10歳を超える頃には感情の一切を削ぎ落としたように、ただただ耐える日々を送っていた。
食事は一日二回、腐りかけのパンを中心に、客が食べ残した残飯を処理させられていた。最初は気持ち悪くて口に含まなかったが、限界を悟ると諦めて生きるためにがっついた。その様子を汚い野犬のようだと嘲笑われ続け、Aは自分の存在をそういう風に認知し始めた。
雑用をする時は店内に出され、終わればまた部屋に戻る。ヘマをすれば暴力、女主人のストレスの掃き溜めとして暴言と暴力の繰り返し。勿論手当てなどされることもなく、唯一保証されているのは生命の存続だけだった。
これほど辛い日々を送っていたAだが、命を絶つ選択肢は彼女には存在しなかった。これが「普通」「当たり前」なのだと脳が錯覚し始めていたからだ。どこにいっても、きっと自分の扱いが変わることはない。死ぬまで誰の元に行こうとこの生活は変わらないのだと本気で思っていた。
平気、と昔は自分に言い聞かせていた言葉が、いつしか効かなくなって。
感情を無くしたように振る舞っても、何故か涙は出てくるのだった。
それが人間の本能だと幼い彼女には理解できなかった。
自分の体はもう可笑しくなってしまったのだ、と冷たい床に座り込んで毎夜のように考えていた。
そんなAが13になる少し前、突然女主人が掌を返したようにAを甲斐甲斐しく世話し始めた。体を綺麗に洗い、新品の服に身を包み、客に出すような豪華な食事が三食きっちり出された。
あの冷たい小さな部屋から、暖かいベッドのある部屋に移され、一般の人と変わらない生活をすることになった。あまりの環境の変化に着いていけないAは、食事も喉を通らず、寝付きも悪くなった。
それでも少しずつ痩せ細った体に肉が付き始め、栄養を損なって軋んだ髪も艶を持つようになった。血色も良くなり、見てくれだけは「普通の少女」になった。
そしてある日、Aは一人の客をもてなすことになる。礼儀作法も何も教えられていない自分をわざわざ指名するなんて変わった人だ、と思いながらも客と対面した時、Aは長らく無表情だった顔を苦し気に歪ませる事になった。
「ああ、こんなに立派になって！会いたかったよ、A」
客は、張り付けたような笑みをたたえるガルダだった。
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水飴(プロフ) - なつみさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！作者の私情の関係にもよりますが、いずれはどちらも書かたら良いなと思っておりますので、お楽しみにして頂けたらと思います！ (2022年9月16日 0時) (
レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - どっちもみたいです!!!! (2022年9月15日 20時) (レス) @page25 id: dfa30137f5 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょさん» コメントありがとうございます！頑張ってどちらも書けたら良いなと思っています😌 (2022年9月12日 21時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - エース、コラさん・・。どちらも気になりますね・・！ (2022年9月12日 21時) (レス) @page25 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - グエグエさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！私のやる気があればいずれどちらも書くと思いますのでお楽しみに...！ゆっくりと更新頑張ります！ (2022年9月12日 11時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作成日時：2022年8月20日 16時
