レベル45-past edition- ページ46
重い体を引き摺ってやって来たのは、だだっ広い広場だった。街を外れた所にあるこの広場は、先代の霊媒師が弔ってきた魂が眠る墓地で、今は王族以外立ち入ることができない神聖な場所としてひっそりと存在していた。
そしてその広場を越え、視界を遮る森林を駆け抜けると、一面の海が広がっている。ハンネルは赤子を姿を隠せる森林の中に置いた。ここなら何か船が通るかもしれないと一縷の望みを掛けて。
ハンネルは、すやすやと眠る赤子の柔らかく暖かい頬を撫で、最期の別れを告げた。
王族の血と罪人となった自分の血を継ぐ彼女が、この世界に生まれ落ちてすぐ天に還ることが無いように。生き延びて、この自由な世界で生きることが出来るようにと願いながら。
「私の元に来てくれてありがとう。貴女の成長を見届けられない、守ってあげられない不甲斐ない母親でごめんなさい。私たちの天使。貴女にたくさんの祝福がありますように＿＿＿＿＿＿＿＿＿
愛しているわ、A」
涙を流しながらその小さく鼓動する温もりを精一杯腕に抱き締めた後、ハンネルは朝日が水平線から顔を覗かせ、照らす街路を歩いて城へと戻った。
街ではハンネルが脱走したと騒ぎになっていた。しかしハンネルはその姿を見せ、私はどこにも逃げない、と誰もを黙らせる王のような威厳で言った。
その日の早朝、城の前では多くの国民の見世物となった霊媒師が火の粉となって空を舞った。
＊
＊
その日の昼、リーズは立ち入ることの出来ない墓地へと足を運んだ。
王が存在しない今、その場所は最早神域でも何でも無かった。隅々まで探した後、海辺の方から赤子の声が聞こえ、すぐさま走って向かった。
逃げたはずのハンネルが自分の身一つで城に戻ってきた時、リーズは子供を捜しに行かなければいけない、と直感的に思った。あんなに我が子を愛していた彼女が捨てるとは到底考えられなかったからだ。
向かった先にはやはりAがいた。ゆりかごを覗き込むとぱっちりと開いた瞳がリーズを見つめ、花のように愛らしい笑みを溢したのだ。
その笑みにリーズは涙が止まらなかった。自分が犯した過ち、止められなかった不甲斐なさ、奪ってしまった幼子の両親。短期間で起こった出来事が走馬灯のように流れ、止めどない涙で頬を濡らした。
何も知らない幼子がこの事実を知るには、あまりにも残酷すぎる。
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水飴(プロフ) - なつみさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！作者の私情の関係にもよりますが、いずれはどちらも書かたら良いなと思っておりますので、お楽しみにして頂けたらと思います！ (2022年9月16日 0時) (
レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - どっちもみたいです!!!! (2022年9月15日 20時) (レス) @page25 id: dfa30137f5 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょさん» コメントありがとうございます！頑張ってどちらも書けたら良いなと思っています😌 (2022年9月12日 21時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - エース、コラさん・・。どちらも気になりますね・・！ (2022年9月12日 21時) (レス) @page25 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - グエグエさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！私のやる気があればいずれどちらも書くと思いますのでお楽しみに...！ゆっくりと更新頑張ります！ (2022年9月12日 11時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作成日時：2022年8月20日 16時
