Happy Birthday！ ページ13
※番外編です
「お誕生日おめでとう」
今日１日、散々言われてきただろう言葉を改めて彼に伝えると、慣れたように微笑んでありがとうと返ってきた。手には小さなフォークと、大食いの彼のために作られた大きめのケーキ。
誕生日パーティーでもあんなに食べていたのに平然として頬張っている彼のどこにそんな大きな胃袋があるのだろうか。そんなことを考えながらじっと見ていると、視線に気付いた彼が勘違いして一口分のケーキを差し出してきた。
「食べたいのか？」
「いや、よく食べるなと思って」
戦時中はずっと我慢していたんだろうな。
隣で見てきたのに、気付いてあげられなかったのだと今になって思う。一日中怪我の治療をする私と違って、実際に戦うナワーブの方が体力も必要なのに、彼は仲間のために自分を犠牲にしてしまうきらいがある。
良く言えば美徳、悪く言えば自己犠牲の塊。
正直、直して欲しいとは思う。多少は自分を大切にして欲しい。けれどそれを願ったところで彼は自分の信念を曲げないだろうし、言えば彼の存在価値を否定することに繋がるだろう。
「ねえ、何かお願い事とか無い？」
「願い事······」
うーん、と顎に手を当てて考えるナワーブが暫くして出した答えは、Noだった。
欲しいものとか無いのかと聞くと、特に思い浮かばないと返ってきた。
戦争中に出来なかったお祝いを今ならしてあげられるから、何か叶えてあげようと思ったのだけれど。無いなら無いで、それだけナワーブは今の状態に満足しているということなので良いことだ。
そんなことを考えていると、何か思い付いたような顔をした。何か見つかったのだろうか。
彼の口が開くのを待っていると、またケーキを刺したフォークを差し出してきた。
「一緒にケーキを食ってくれ」
「······そんなことでいいの？」
「あの時は、こうして一緒にケーキを食べることも出来なかっただろ？
いつか平和な時間が流れる場所で、お前と食えたらいいなって思ってたの、今思い出したんだよ」
だから、と言って差し出されたケーキを口に入れると、彼は今日一の笑顔を見せてくれた。
ナワーブにとって良い一年になりますように。
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誕生日おめでとうナワーブ！
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水飴(プロフ) - 【湖の宝石】さん» 初めまして！旧作も見てくださってたんですか！？ありがとうございます···！お待たせさせてしまいますが、ゆっくり書いていきますので、旧作との違いを楽しんでいただけましたら幸いです！ (2022年6月23日 20時) (
レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
【湖の宝石】(プロフ) - リメイク前の方も見ていたのですが、また見られるなんて嬉しいです！更新頑張ってください！ (2022年6月23日 7時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作成日時：2022年5月31日 17時
