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No.10 ページ12

今日はいつにもまして寒い日だった。
雪が降っているわけでは無いのに、風だけが異様に冷たく、体の芯まで冷やしていく。

寝惚け眼を擦りながら食堂に赴き、お湯を沸かしてココアを作った。日が昇り始めた頃に起きたので、まだ誰も起きていないと思う。いつも賑やかな館がうってかわってしんと静まり返っている。


(今日の夢見は悪かったな)


温かいココアを啜りながら、起きた瞬間のことを思い出す。夢の内容ははっきり言って覚えてはいない。けれど、起きたら涙が頬を伝った跡がうっすらと残っており、泣いたあと特有の腫れぼったさがあった。

私は何か悪夢を見ると、眠っているうちに泣いてしまう事がある。幼い頃はそんなこと無かったので、戦争に加わってからの記憶が時々夢に出てきてしまうのかもしれない。




······そう言えば、戦時中もそんなことがあったなと思い出した。


一度同じ軍の男の人に襲われかけたことがある。女性が戦地にいることは無いに等しくて、死と隣り合わせの毎日に、不自由な生活、毎日聞こえる銃声と爆発音というストレスの吐き場所も無く、勿論そういった色欲を吐き出す事も出来ない。

そんな中に私がいたからか、決して綺麗な格好でも無い私を欲の掃き溜めにしようとした。
寸での所でナワーブが守ってくれたけれど、またいつ狙われるか分からない不安が募り、その晩悪夢を見た。あの男の人にあのまま襲われる夢だった。


一人離れたところで眠っていたので、他の人には泣き声は聞こえなかった。しかし眠れずに辺りを散策していたナワーブが私の元に来たので見られてしまった。

恥ずかしいとは思いつつも、涙は急には止まらない。説明しようにも言葉が喉に引っ掛かって伝えられなかった。そんな私にナワーブは何も聞かないで、傍にいてくれた。きっと昼間に起きた出来事が私を泣かせているのだと察してくれていたのだと思う。



『お前が眠るまで見張っててやるよ』



此方に顔を見せずにそう言うナワーブの背中が頼もしくて、安心して眠りについたのを覚えている。
結局朝まで見張りをしていてくれたらしく、眠たそうにしていた。








(ナワーブ、起きてるかな)



何だか無性に顔を見たくなった。
ココアを飲み終えたら、一度部屋に行ってみよう。

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設定タグ:第五人格 , 傭兵 , ナワーブ・サベダー   
作品ジャンル:恋愛
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水飴(プロフ) - 【湖の宝石】さん» 初めまして!旧作も見てくださってたんですか!?ありがとうございます···!お待たせさせてしまいますが、ゆっくり書いていきますので、旧作との違いを楽しんでいただけましたら幸いです! (2022年6月23日 20時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
【湖の宝石】(プロフ) - リメイク前の方も見ていたのですが、また見られるなんて嬉しいです!更新頑張ってください! (2022年6月23日 7時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水飴 | 作成日時:2022年5月31日 17時

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