No.9 ページ11
「ま、負けた······」
「ふふ、惜しかったですね」
私たちは最終ラウンドまで勝ち残ったものの、逃げ切ることができずに21点を越えて２位になった。申し訳ないなと思いはするものの、彼は特に気にしていない様なのでまあいいか、と思う。
私は気になって黒い人の事を尋ねると、謝必安さんは「白黒無常」について詳しく話してくれた。
謝必安さんともう一人＿＿＿＿范無咎さんは一つの体を共有して使っており、それぞれ戦い方もスキルも違うこと。互いの姿を見ることはできず、声を聞くこともできないこと。
范無咎さんの事を話す謝必安さんは、表情は落ち着いていたものの、声が少し震えているように聞こえた。彼らが過去に悲惨な出来事に遭ったことは、言葉にしてもらわなくとも彼の様子を見ていれば察することができる。私もこれ以上深追いすることはしなかった。
「傘に魂が宿っているんですか？」
「ええ、なので無咎にも貴女の声は聞こえていると思いますよ」
今日は試合で少し見ることしか出来なかったけれど、いつかまた范無咎さんとも話してみたい。
その旨を傘に向かって伝えると、傘が少し揺れた気がした。
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視点なし
「変わった奴だ」
ハンターの館で、椅子に座っている范無咎がポツリと呟いた。誰に聞かれるでもなくその言葉は木霊して消えていく。彼の脳裏に浮かんでいるのは無論Aの姿だった。
傘に宿る己に向かって話しかけていた。どこぞの傭兵と似た姿をしていて、職業も「衛生兵」だというから強気で勇ましい女かと思いきや、柔らかな笑みを浮かべて謝必安と話していた。
またいつか話してみたい、などと気恥ずかしくなるようなことを言ってのけるような愛想の良い彼女の首に巻き付いた包帯と、袖で隠れてはいるものの時々見える切り傷は、彼女が遭遇してきた過去を暗に仄めかしている。
それでもきっと彼女は健気に日々を生きてきたのだ。幼い少女のような純粋さを失うことなく。
その姿がいじらしいのだと、彼女との別れ際に謝必安が范無咎に向かって言った。
「······まあ、確かにそうだな」
満更でもないようにそう呟いた范無咎の口許は弧を描いていた。
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水飴(プロフ) - 【湖の宝石】さん» 初めまして！旧作も見てくださってたんですか！？ありがとうございます···！お待たせさせてしまいますが、ゆっくり書いていきますので、旧作との違いを楽しんでいただけましたら幸いです！ (2022年6月23日 20時) (
レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
【湖の宝石】(プロフ) - リメイク前の方も見ていたのですが、また見られるなんて嬉しいです！更新頑張ってください！ (2022年6月23日 7時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水飴 | 作成日時：2022年5月31日 17時
