partner 2

喪失感と逃げ ページ9

ar side

20分くらい経った頃だろうか。

知念が戻ってきた。

知「涼介、やっと落ち着いたけどまだ震えてる。今は無理に行かない方がいいかも。」

知「だから大貴、今は少し時間置いたら？」

…は？
わけがわからない。なにも聞かされぬまま、時間を置いて？
そもそも山田が少しでも話してくれていたら…

知念にじゃなく山田に対しての怒りが湧き出てくる。

『…んだよ、それ。俺がどんだけ心配したと…ざけんなよっ…』

居ても立っても居られなく、感情のままに行動した。

メンバーが行くなと止めに入るけど今は無理だ。
自分でも抑えきれない。

みんなの手を振り切って隣の楽屋のドアを開ける

目に入ったのはソファーで横たわっている山田の姿とその隣で座っているいのちゃんの姿

いのちゃんは俺を見ると何かを察したのか黙って出てくれた。

『…山田、話あるんだけどいい？』
「大ちゃん…。わかった…」

起き上がって手首のブレスレットを握った

ねぇ、山田。俺も怖い？

握った拳に力を入れているのがわかった。

『なぁ山田、こっち見て？』

うつむいている山田はそれを聞いて少し顔を上げたけどみてはくれない。

無理やり顎を掴んで向かせた。

『見てって言ってんだろ…look』

低く、冷たい声。

命令に従うことしかできない山田は涙を浮かべて俺を見た。

『なにがあった？…俺に言えないこと？話してくれよ…say』

零れた涙が唇に伝い照らした。
小さな口は開こうとしない。

『言えっつってんだろ…say』

お願いだ、言ってくれ…

「ゃ…やだぁ…ゃめ、大ちゃ…！ゃんぷ。JUMP…おねが、やめて…」

この瞬間に俺の中で何かが壊れた。

泣いている山田をよそに俺には大きな喪失感が襲った。

恋人で、パートナーで。
俺には苦しんでいる山田に、なにもできない。
話を聞く事も、慰める事も。

今山田を苦しめているのは紛れも無い俺で。


あぁ、最初からこうしていればよかったのか。

『山田、俺たち別れよっか』
『パートナーも解消しよ？』

「…ぇっ…な、で？おれがぃわなかっ…たから？」

『それもあるし山田に何もしてやれない、苦しめることしかできない。自分が嫌になるんだよ。そうやって信頼されない度に情けなくて、悔しくて、俺もきつい…』



『だから…別れよう？山田』

別れを告げた後山田がどうしたかはわからない。

今山田を見たら心が押し潰されそうで楽屋から逃げるように出た。

廊下を走るように歩いて。
頰には沢山の雫が流れていた。

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