勿忘草-ﾜｽﾚﾅｸﾞｻ-５

┣その2 side貴女 ページ9

sideテトル


カラーンカラーン…
カラン



？「さぁ、良い子はもう寝る時間じゃ」


老人が私に言った。


夜の鐘が鳴ったら、眠る時間。
小さい頃から大人に言い聞かされたこと


"夜は悪魔が出るから天使は寝る"


じいやが口を酸っぱくして、私に教えてくれた。


じいや「"あの方"を困らしてはいけないよ」


そう言ってじいやは部屋の灯りを消した。
真っ暗闇のなかで外の風の音が聴こえる、その音が小さい子供にとって、とても恐いものだった。

夜中に泣き出すことなんてよくあった。
そんなときは、隣の部屋にいる"あの方"のところへ行くのだ。


？「どうしたの？怖い夢でも見たの？
大丈夫、わたしが守ってあげるからね。」


優しい温かな手でそっと撫でてくれる。
私は"あの方"が大好きだった。

しかし、朝になればそこには誰もいない。
冷たいベッドと机の置かれた走り書きのメモ…


「いってきます」

子供にとっては悲しい現実だった。
じいやに怒られながらも勉学に励む。
"あの方"はたまにしか帰ってこれない。


"あの方"に褒めて欲しくて
笑って欲しくて、


一生懸命に頑張っていたんだ。

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