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とりあえず、兄さんに話が通じないということがわかった。
それだけでも充分な進歩だと思う。
とどのつまり。
私の家には両親(仮)はニセモノ。
兄は頭がぶっ飛んだ。
ということ。
私、可哀想。
家に、大した居どころないな……私。
家に居場所がないなら……学校で作るしかない。
幸い、私はまだ三年生だ。
三年生になりたての女子。
今は夏休み真っ只中。
イメージが変わったとてイメチェンで誤魔化すことが出来るでしょう。
我ながら天才だと思う。
とりあえず、人に好かれるってなんだろう。
好かれてる人が周りにいないのか(失礼)なかなか想像ができない。
視線の端で捉えた本棚の本の題名を目でなぞった。
小説とかに出てくる主人公ってよく人に好かれてるよね。
どんなのだろ……。
優しい人
可愛い人
女子力が高めな人
女の子らしい子ってわけかな……？
女の子らしくならないと。
「A〜、おつかいに行ってくれる〜？」
お母さん(仮)の声。
おつかい、面倒……。
『ヒョウ兄。おつかい、行こう』
「なんでだよ」
ダメみたい。
『アイス、奢ったげるから』
「……仕方ない」
アイスで釣られた兄さん、ちょろい。
『母さん、何買ってくればいい？』
「買ってくるもの、メモしておいたから持って行って」
『ありがと、いってきまーす』
スーパー着
『お豆腐、お豆腐……』
晩御飯はお味噌汁と野菜炒め。甘酢肉団子とご飯。
私、ちょいちょい手伝いをしてるんだよね。
偉いでしょ？
レジへ向かおうとするとぎゅ、と服の袖を引っ張られた。
「アイス」
憎くも覚えてたみたい。
『はいはい』
アイスコーナーへ向かう。
アイスコーナーはひんやりした空気をまとっていた。
でも、私には気味が悪いほど寒さが身にまとわりついた。
『どれがいい？』
「これ」
指をさしたのは、パピコだった。
パピコは美味しい。
私、チョココーヒーが好き。
『これの何味がいいの？』
「チョココーヒー味」
さすが、私の兄なだけあるね。
手に提げていた買い物かごに入れてレジへ向かう。
レジにバーコードを読み込ませてお会計。
おつかい用に貰ったお金を入れる。
さすがに買い食いしたことがバレないように。
一度頼まれたものを買ってから。
パピコを買った。
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作者名：カッパ巻き | 作成日時：2021年5月8日 18時
